夏の和歌 天(あま)の河(がわ) そらにきこえし舟出(ふなで) 加賀左衛門(かがのさえも)には 

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

天(あま)の河(がわ) そらにきこえし舟出(ふなで)には 
われぞまさりて 今朝(けさ)はかなしき

これは平安時代中期の女官、加賀左衛門(かがのさえも)の作です。

加賀左衛門(かがのさえも、左衛門は「さえもん」「だいも」とも)は、後朱雀(ごすざく)天皇の女御(にょうご)藤原延子(えんし)に仕えました。

たくさんの歌合わせに参加。勅撰集に十首入集されています。

この歌は「新古今和歌集」に入っています。

歌の詞書に、

老いた親が七月七日、筑紫に下り、はるかに離ればなれになってしまうので、翌朝、親が船に乗るところに人をやって歌を届けさせた

とあります。

歌の意味は

天の川の牽牛・織女、ひと晩を過ごした朝は船に乗って再び別れ別れ
今朝のわたしの悲しみはそれに勝っています

親子は再び会えたのでしょうか?!

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-07-06 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

星合(ほしあい)の 七日(たなばた)も近き 天の川 正岡子規

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の歌を鑑賞して参りましょう!

星合(ほしあい)の 七日(たなばた)も近(ちか)き 天(あま)の川(がわ)
桐(きり)の木末(こぬれ)や 浅瀬(あさせ)なるらん

これは正岡子規の作品です。

意味は

牽牛・織女のふたつの星が出会う七夕が近づく天の川
桐の梢が浅瀬となった

天の川に触れるばかりに伸びた桐の梢が、天の川の浅瀬を思わせたのでしょうね。

そこから牽牛が天の川を渡って織女に会いに行くんだなあ。

「星合(ほしあい)」という言葉がすてきだと思ったので選びました。

「星合」とは陰暦七月七日の夜、牽牛・織女の二つの星が出会うことをいいます。

「木末(こぬれ)」は、梢(こずえ)のことです。

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-07-03 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

【夏の和歌】いつしかと  またく心(こころ)を 藤原兼輔(ふじわら の かねすけ)

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

牽牛が七夕のとき、天の川を渡れなかった和歌を以前、ご紹介しました。

今回も七夕にちなんだ和歌です!

いつしかと またく心(こころ)を 脛(はぎ)にあげて 
天(あま)の河原(かわら)を 今日(きょう)や渡(わた)らむ

作者は平安時代中期の公家で歌人の藤原兼輔(ふじわら の かねすけ)です。

この作品は「古今和歌集」に収められています。

この和歌には「七月六日たなばたの心をよみける」という詞書がついています。

意味は、

今か今かと、気持ちがはやる
裾を上げて脛を出し、天の河原を今日もう渡ってしまおうか

「脛」は 「ハギ」と読みますが、意味は 「脛(すね)」のことです。

はやる気持ちを抑えきれず、七夕の一日前に天の川を渡って織姫に会いに行こうとする牽牛を想像して詠ったものです!

この和歌は「誹諧歌」に分類されています。

公の場にかなう「正格の歌」に対する「破格の歌」ということだそうです。

遊び的で知的技巧性が強く、口語、俗語も多用する「面白い」和歌です。

牽牛ってさあ、明日がデートなのに待ちきれず、ケツをまくって脛が見えるのもお構いなしに、天の川を渡ろうとしてるんじゃね? 

てな感じで面白がってたのでしょうか?!

ちょっと礼儀正しくないけど、会いたくなったらいてもたってもいられない。

そんなところは、共感しちゃいますね!

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-07-02 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

夏山(なつやま)の 影(かげ)をしげみや 紀貫之(きのつらゆき)

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

夏山(なつやま)の 影(かげ)をしげみや 
玉(たま)ほこの 道行(みちゆ)き人(ひと)も 立(た)ちどまるらむ

作者は、平安時代前期から中期にかけての貴族で歌人の紀貫之(きのつらゆき)です。

「玉鉾の」は「道」にかかる枕詞です。

この作品は「拾遺集」に収められています。

意味は

夏の山の木陰が生い茂っている
道行く人も立ち止まっているだろう

以前、このブログで「清水流るる柳陰」が登場しましたが、この歌は「夏の山」の木陰。

生い茂る山の木は夏の強い日差しをさえぎり、柳の木陰と違って、濃い日陰をつくることでしょう。

道行く人にとっては、ここも絶好の休憩ポイントですね。

この歌は、藤原定国という人物の四十歳のお祝い行事のために、貫之が詠んだ歌だそうです。

生命力を感じさせる夏山の大きな木、その木が作り出す陰を求めて集まる人々。

藤原定国さんはきっと、活力があって、人望も厚い方だったのでしょう。

「夏山の陰」には、そんな藤原定国さんへの繁栄を祝う気持ちが込められているのだなと思いました。

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-07-01 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

【夏の和歌】天の川 浅瀬しら波 たどりつつ 紀友則(きのとものり)

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

天の川 
浅瀬しら波 
たどりつつ
渡りはてねば 
明けぞしにける

作者は、紀友則(きのとものり)です。

この作品は「古今和歌集」に収められています。

意味は

天の川の浅瀬を
白波をたどりながら
探していたら
渡りきらないで
夜が明けてしまった

七夕の織姫と牽牛の話がベースになっています。

1年に一度しか会えないチャンスに、牽牛は川の浅瀬が見つからず、渡れないうちに朝になってしまいました!

何ということでしょう!

牽牛はさぞがっかりしたでしょうし、自分をふがいなく思ったでしょう。

織姫は怒ったでしょうね。

「なんで下見してないの? 1年あったじゃん!」 

次回会うときにまず説教タイムです。

実はこの歌、宇多天皇の時代(寛平の御時)、七夕の夜に天皇から殿上人たちに歌を奉れと仰せつかったとき、詠んだものなんです。

たくさんの七夕の歌が献上されるので、友則はちょっとひねって考えたのかもしれませんね。

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-07-01 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

夏の和歌 道(みち)の辺(べ)に 清水(しみず)流(なが)るる 柳陰(やなぎかげ) 西行

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

道(みち)の辺(べ)に 清水(しみず)流(なが)るる 柳陰(やなぎかげ)
しばしとてこそ 立(た)ちどまりつれ

作者は平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した、僧侶で歌人の西行です。

この作品は「新古今和歌集」に収められています。

意味は

道のそばに、清水が流れ出ている柳の小陰があった
少しだけと、立ち止まってしまったよ

暑いときは、日陰はとても魅力的に見えますね

道路に植えられている柳の木陰って、ほかの木より明るい感じがします。

枝葉が風にゆらゆらしていたら、とっても気持ちよさそうです。

そこに清水も流れていたら、もう、そこは夏の人気の休憩スポットに違いありません。

道中を急いでいても、ちょっと休みたくなりますよね。

夏の移動は、熱中症にならないように、がんばりすぎず、こまめに水分をとり、ときどき休むのがいいです。

西行は出家前から和歌に秀で、23歳で出家してからは心の赴くまま諸所に草庵を営みました。

しばしば諸国を巡る漂泊の旅に出て、多くの和歌を残しました。

秀郷流武家藤原氏の出自で、藤原秀郷の8世孫だそうです。

秀郷といえば、「さの秀郷まつり」があります。

栃木県佐野市で毎年行われるもので、武芸に秀で、弓術の達人でもある秀郷公にあやかり、古式ゆかしい流鏑馬が披露されたり、市民総おどり、みこし・おはやし巡行、ライブ演奏などが行われています。

聞いたことがあり、見てみたいなと思っていたのですが、今年は残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止です。

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-06-29 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

【夏の和歌】石麻呂(いしまろ)に 我(われ)もの申(もう)す 大伴家持(おおとものやかもち)

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

石麻呂(いしまろ)に 我(われ)もの申(もう)す 
夏痩(なつや)せに よしというものぞ 鰻(むなぎ)とり食(め)せ

作者は「万葉集」の編纂者として名高い歌人の大伴家持(おおとものやかもち)です。

この作品は「万葉集」第16巻に収められています。

意味は

石麻呂に言います
夏痩せに効くそうだから、うなぎをお食べなさい

平賀源内の名キャッチコピー「本日土用丑の日」を思い起こさせます。

やせ型の友だちを心配して、精の付くものを食べるよう薦めている、友だち思いなんだな。

と思いきや、実はこの和歌、歌の前に嗤笑歌(ししょうか、笑いの歌)と書かれていて、二首並んでいます。もう一首はこんな和歌です。

痩(や)す痩(や)すも 生(い)けらばあらむを 
はたやはた 鰻(むなぎ)をとると 川(かわ)に流(なが)るな

痩せていても、生きていればいい
うなぎを獲ろうとして川に流されないでください

やせぎすの石麻呂をからかっているのですね。

和歌には食べ物は詠まれません。

食べる行為は雅ではないとされていますから。

ところで、私は写真撮影が趣味です。

食べることを題材にすることについて昔、「おいしいものを食べるときは、みんないい表情をするから、シャッターチャンスじゃないか」と思っていました。

でも、当時通っていた写真教室の先生から、「食べるシーンは作品になりにくいよ」とアドバイスを受けました。

まあ、それは昔の話。

今は、SNSの投稿に食べ物があふれているご時世ですね。

食べ物の歌も、たくさんあるのかもしれません。

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-06-27 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

夏の和歌 音羽山(おとわやま) こだかく鳴(な)きて 郭公(ほととぎす) 紀貫之

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

音羽山(おとわやま) こだかく鳴(な)きて 郭公(ほととぎす) 
君(きみ)が別(わか)れを 惜(お)しむべらなり

作者は和歌界のスーパースター、平安時代前期から中期にかけての歌人、紀貫之です。

この作品は「古今和歌集」に収められています。

意味は

音羽山の梢高く鳴くほととぎす
あなたとの別れを惜しんでいるよう

音羽山は京都の滋賀県大津市側にある山。

そのあたりでは一番高い山だそうです。

山のこずえで鳴くほととぎすの声はよく響きます。

リズムは、しゃくり上げるような感じです。

少女漫画にありそうですね。

旅立つ恋人を見送る途中、ヒロインの女の子が最後は明るくお別れしよう、とふるまっていると、音羽山の高いほうからほととぎすの声が聞こえてくる。

「鳴いてるね」
「夏だねえ」

とかほほえみあったりして、普通の会話はしている。

でも、心の中では、
「こんなやりとりもできなくなるなあ。山のホトトギスもあなたとの別れを惜しんで鳴いているようだ。あの声は私の心の悲しみの声」

みたいな?

和歌は想像力をふくらませて詠むと楽しいです。

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-06-26 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

夏の和歌 風(かぜ)そよぐ ならの小川(おがわ)の 夕暮(ゆうぐ)れは 藤原家隆(ふじわらのいえたか)

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

風(かぜ)そよぐ ならの小川(おがわ)の 夕暮(ゆうぐ)れは
みそぎぞ夏(なつ)の しるしなりける

作者は鎌倉時代初期の公卿で歌人の藤原家隆(ふじわらのいえたか)です。

この歌は「百人一首」に収められています。

意味は、

風がそよそよと吹いている楢の小川の夕暮れ
もう秋のようだが、みそぎの行事が、確かに夏であることを物語っているよ

「ならの小川」の「なら」は、「奈良」ではなく、「楢」のことです。

この「楢の小川」は、京都市北区の上賀茂神社の境内を流れている御手洗川(みたらしがわ)のことです。

楢の木はブナ科の落葉樹で、葉は色が濃くて形は菊の葉に似ていると思いました。

「みそぎ」とは「六月祓」のこと。

6月といっても旧暦の6月30日(現在の暦の8月上旬)に行われるもので、夏の行事です。

川の水などで身を清め、1~6月までの穢れを払い落とすのだそうです。

わたしはまだ「楢の小川」に行ったことがないので、画像で見ました。

うっそうと繁る楢の葉が小川の上の太陽をさえぎっていて、清涼感がありました。

夏でも夕方、風がそよそよ吹いていたら、涼しくて、もう秋かしらと思えるほどだったのでしょうね。

母は夏、友だちが家に泊まりに来たとき、「涼しいのはごちそうだから」と部屋をギンギンに冷やしてくれたのを思い出しました。

「みそぎ」行事については、関東人ですのでよくわかりませんでしたが、「ならの小川」の涼感については、四季を知る日本人なら誰もが共感を得るのでは、と思いました。

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-06-25 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed

夏の和歌 夏(なつ)の野(の)の 繁(しげ)みに咲(さ)ける 姫百合(ひめゆり)の 

こんにちは
宮川です。

今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!

夏(なつ)の野(の)の 繁(しげ)みに咲(さ)ける 姫百合(ひめゆり)の 
知(し)らえぬ恋(こい)は 苦(くる)しきものを

万葉集」に収められています。

作者は大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)です。

額田王以後、最大の女性歌人ともいわれ、「万葉集」には女流歌人のなかでは最多の長歌・短歌合わせて84首が収録されています。

「万葉集」の編纂にも、関わったとされます。

歌の意味は

夏の野の草が茂っているなかに咲く姫百合のように
思う人に知られることなく恋焦がれているのは辛いものです

姫百合は6月ごろ、山野に咲くオレンジ色のゆりで、普通のゆりより小ぶりなので「姫」が付けられました。

片思いの苦しい気持ちを表現した歌です。

万葉集に数多くある恋の歌のなかでも、よく知られた存在です。

野に咲く小さいゆりながらも、オレンジの強い色が想いの強さ、激しさを表しています。

いかがでしたしょうか?

これからも素敵な歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!




Posted on 2020-06-24 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed