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【美術展インプレッション】リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展 そもそもリヒテンシュタインってどんな国??


リヒテンシュタイン展

個人的に、美術展や美術作品を鑑賞する楽しみのひとつが、作品にまつわる歴史や文化的な背景を知るきっかけになること。

今回の「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」(ここでは「リヒテンシュタイン展」と言うことにします)でも、リヒテンシュタインという国やリヒテンシュタイン侯について、知ったり考えたりするとてもいい機会になった。

リヒテンシュタインとはどういう国か?? wikiをもとに調べてみると、こんな感じ。

面積160平方キロ(世界190位)、人口約3万5000人(世界210位)という超ミニ国家。

あまりに小さいので自国での防衛は放棄して、隣国スイスに任せている(自国は非武装中立)。

主な産業は精密機械や金融などとなっているが、実際はタックスヘイブンによる法人税収入。全税収の40%になるという。人口よりも法人数のほうが多いらしい。世界中のグローバリズム思考を持った人たちが、租税回避として利用している国ということですね。

GDPがすごくて、総額は41億6000万ドルで世界165位。ところがひとりあたりになると11万8000ドルとなる(2007年)。

これがどれくらいの金額かというと、2018年のIMF統計によれば、アメリカ約6万3000ドル、ドイツ約4万8000ドル、日本約4万ドルだからダントツで恐らく世界トップクラスだろう。こんなに豊かだから、国民は直接税(所得税、相続税、贈与税)はない。

さて、美術展のほうだが、7章立てで構成されていた。

第1章 リヒテンシュタイン侯爵家の歴史と貴族の生活
第2章 宗教画
第3章 神話画・歴史画
第4章 磁器-西洋と東洋の出会い
第5章 ウィーンの磁器製作所
第6章 風景画
第7章 花の静物画

最後の「花の静物画」だけは撮影OKエリアとなっていた。こういう風にほとんど撮影NGだけど、一部だけ撮影OKにして、来場者の撮影したい気持ちを満たす展覧会が増えましたな。

個人的には、最近、宗教や神話を題材にした絵画に関心大きいので、「宗教画」と「神話画・歴史画」のエリアは、とても見応えありました。

特に「楽園のアダムとエヴァ-堕罪」(ルーント・サーフェリー、コルネリス・コルネリスゾーン・ファン・ハールレム、1618年)は、じっくり見てしまった。

画面中央にアダムとエヴァ。エヴァはもう禁断の木の実をかじってしまったようだ。かじった実を左手に持ち、右手に違う実をアダムに差し出して、「ほら、おいしいわよ、食べて」と言っている(ようだ)。

アダムは「それ食べたらいけないよ~」と言っているのかどうか、右手ひとさし指で天上を指している。「神様が食べちゃダメって言っているじゃない~」とエヴァに言っているのかもね。

アダムもエヴァも全裸(陰部が葉で隠されているだけ)なのだが、ふたりとも体格がいい。アダムは男性だから違和感ないけれど、エヴァは女性なのに、からだががっしりしていて、胸のふくらみがなければ男性のカラダだよ。西洋美術では、こういう風に女性を描くこと多いけれど、どうしてだろう?? 謎解きの楽しみですな。

国立西洋美術館で開催中の「ハプスブルク展」にも、同じテーマの絵画「堕罪の場面のある楽園の風景」(ヤン・ブリューゲル(父)、1612/1613頃)が出品されている。

こちらも見たよ。アダムとエヴァは後ろのほうに小さく描かれている。たくさんの動物たちが生き生きと描かれ、こちらが主人公ですな。こんな風に同じテーマの作品を見比べてみるのも、とても楽しい。

リヒテンシュタイン展に話を戻して、「磁器-西洋と東洋の出会い」のエリアも、とても興味深かった。展示されていたのは、日本の有田窯や中国・景徳鎮窯の磁器に、ヨーロッパ風の大胆な金属装飾を施した大型磁器。磁器の青色の絵と大振りな金色のブロンズ装飾の組み合わせが、素人目には合っているんだか、合っていないんだか、ゴージャスだけどよく分からない世界を作りだしていた。

もちろん、ほかにもすばらしい作品はたくさん。ヨーロッパ貴族の美意識に関心ある方は必見ですね。




Posted on 2019-10-22 | Category : アートに誘われて, コラム | | Comments Closed
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