ロックの次に来る世界ムーブメント
わたしはロックミュージックが好きだ。わたしはロックとは単なる音楽の一ジャンルではないと考えている。ロックは思想であり、人としてのあり方であり、社会に向き合う姿勢そのものだ。1960年代から70年代にかけて世界を覆ったロックの精神は、親世代や既存の社会秩序への反抗を核としていた。それは若者が自らの決定権を主張し、旧来の価値観を揺さぶる運動であった。音楽はその表現手段にすぎず、本質は個人の精神の解放にあった。
わたしはそのような意味でのロックミュージックは、すでに歴史的役割を終えたと考えている。ロックは破壊のエネルギーを持ち、既存秩序に亀裂を入れる力を持っていた。親世代や社会への反抗という構図は、かつては大きな推進力となったが、現代は別の課題に直面している。グローバリズムが蔓延し、マイノリティの権利が極端に強調され、分断が様々な局面で広がった。
ロックの次に来るムーブメントは、反抗ではなく「結び直し」であるとわたしは考える。個人と社会・国家との関係を再構築し、個人の解放よりも、人と人との関係性の進化を重視する動きが強まるであろう。分断ではなく信頼、対立ではなく協働へと重心が移る。それは過去への単純な回帰ではない。成熟した個人が、自覚的に共同体と向き合う段階への移行である。
こうした変化の背景には、技術・経済・思想の三つの大きな潮流がみてとれる。技術面ではAIが急速に進化している。AIは単なる効率化の道具にとどまらず、人間の判断や創造の領域にまで入り込みつつある。AIが進化するいま、求められるのは人間性の再定義であろう。何が人間固有の価値なのか、責任の主体は誰なのか、技術をどう制御するのか。この問いに正面から答えなければ、社会の秩序は不安定になる。
経済面では、これまでのグローバル経済からブロック経済への移行が進みつつある。地政学的緊張や安全保障上の観点から、国家間の連携の見直しが図られている。思想面でも、行き過ぎたグローバリズムから、より健全なナショナリズムへの揺り戻しが見られる。ここでいうナショナリズムとは排外主義ではなく、自国の歴史や文化を尊重しつつ他国と協調する姿勢である。
わたしはこれらの倫理的基盤として儒学、特に陽明学を重視している。陽明学は知行合一を説き、内面の修養と社会における実践を不可分とする思想である。その経典の一つである『大学』には、「身を修め、家を斉え、国を治め、天下を平らかにする」という文言がある。個人の修養が家庭を整え、家庭の安定が国家の秩序を支え、国家の安定が世界の平和につながるという連鎖である。同時にこの逆の流れも成立する。世界の平和、国家の安定が個人の修養にもつながる。この思想は、現代においても十分に通用する。
経済や安全保障が再編される時代であるからこそ、倫理的基盤が必要である。社会や国家との結び直しは、制度改革だけでは成り立たない。一人ひとりが自らを律し、信頼を築き、責任を引き受ける覚悟を持つことから始まるのである。
ロック時代が「破壊」の精神であったとすれば、いまは「再構築」精神の時代である。それは「本来のあり方を取り戻す」精神でもある。いま多くの人たちが、日本人ならではの美徳を再認識し取り戻していると感じる。私は陽明学の教えを拠り所としながら、社会や国家における倫理と秩序の再設計を、自分なりに模索していきたい。声高な主張よりも、静かな実践の積み重ねによって形づくっていくことが、わたしにとってはふさわしいように思える。
(執筆 M&C蓬田修一)
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