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【新年の歌】年くれぬ 春来(く)べしとは 思ひ寝に(西行)


たつ春の朝(あした)よみける

年くれぬ 春来(く)べしとは 思ひ寝に 
まさしく見えて かなふ初夢

西行

こんにちは 蓬田です!

今回は西行の歌です。

西行、俗名は佐藤義清(のりきよ)。佐藤家は武家で、出家する前は、鳥羽上皇の北面の武士で、官職は兵衛尉(ひょうえのじょう、上から3番目)でした。

ちなみに、北面の武士は上皇に仕え、近衛府は天皇に仕えます。

義清は二十三歳で出家。法名は円位、西行と号しました。

この歌は、西行の歌集「山家集」に収められています。

いろいろな解釈
詞書にある「たつ春」は立春。歌は、西行が諸国を訪ねる旅に立つ春の日に詠んだ、という解釈があるようです。

歌の内容から考えると、詞書の「立つ春」は立春でしょう。

また、西行が想っている人が初夢に出てきた、という解釈もあります。

でも、どうなんでしょう? 北面の武士のエリートで、その職を捨て、世を捨てた男が、一途な恋愛のようなことを詠うのでしょうか?

しかも、この歌は「三家集」の冒頭に収められています。

歌集の冒頭には、歌集全体を象徴するような歌、または、歌集のスタートを切るにふさわしい切れ味のいい歌を載せるように、個人的には思います。

わたくしはこんな風に現代語訳しました。

今年も一年が暮れた。穏やかな春が来るに違いないと、そんな気持ちで眠ると
思ったとおりの世の中になっている。そんな初夢を見た

意味深長な歌だと思います。




Posted on 2020-12-31 | Category : コラム, 和歌とともに | | Comments Closed
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