漢詩「新春」 南宋 真山民(しんさんみん)
[text:蓬田修一]
今年も残すところ半月ほど。年賀状の準備に忙しい人も多いだろう。高校の国語の教員をやっている大学時代の友人から届く年賀状には毎年、漢詩の一節が書いてある。新年から漢詩に接するのは、なかなか気分がいい。
南宋の真山民(しんさんみん)という人の詩に「新春」がある。詩の中の気に入った一節を年賀状に取り入れてみたら如何だろう。趣のある年賀状に仕上がるのではないだろうか。
[原文]
余凍雪纔乾
初晴日驟暄
人心新歳月
春意旧乾坤
煙碧柳回色
焼青草返魂
東風厚薄無
随例到衡門
[書き下し]
余凍(よとう) 雪(ゆき)纔(わず)かに乾(かわ)き
初晴(しょせい) 日(ひ)驟(にわ)かに暄(あたた)かなり
人心(じんしん) 新歳月(しんさいげつ)
春意(しゅんい) 旧乾坤(きゅうけんこん)
煙(けむり)は碧(みどり)にして 柳(やなぎ)色(いろ)を回(かえ)し
焼(やけあと)は青(あお)くして 草(くさ)魂(たましい)を返(かえ)す
東風(とうふう) 厚薄(こうはく)無(な)く
例(れい)に随(したが)いて 衡門(こうもん)に到(いた)る
[現代語訳]
余寒に残っていた雪もやっと乾き、
久しぶりに晴れて、日の色がにわかに暖かくなる。
人の気分は、新年とともに新たになり、
春の陽気、天地をもとのとおりにする。
もやは青く、柳が新鮮な緑にもどり、
野焼きの跡は色づき、草が生き返る。
春風は、えこひいきなく吹き渡り、
例年のように、わび住まいのわが家の門にもやってきた。
『漢詩を読む 冬の詩100選』(石川忠久著)より。
(2014年12月15日)
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