冬の漢詩 「省中」 宋 王安石
[訳:蓬田修一]
[漢文]
省中 宋 王安石
大梁春雪満城泥
一馬常瞻落日帰
身世自知還自笑
悠悠三十九年非
[書き下し]
省中(しょうちゅう) 宋 王安石(おうあんせき)
大梁(たいりょう)の春雪 満城の泥
一馬 常に落日を瞻(み)て帰る
身世 自(みずか)ら知り 還(ま)た自ら(みずか)笑う
悠悠(ゆうゆう)三十九年の非(ひ)
[現代語訳]
役所 宋 王安石(おうあんせき)
汴京(べんけい)の春の残雪 溶け始めて町中がぬかるむ
一頭の馬にまたがる私 いつも落日を見ながら役所から家へ帰る
これまでの人生 それがどんなものか自分でも分かっている そして自分で自分を笑うのである
あてどもないこれまでの三十九年 ダメな人生だった
[ひとこと解説]
題名の省中(しょうちゅう)とは役所のこと。
大梁(たいりょう)は宋の都・汴京(べんけい)の古名。戦国時代の魏(ぎ)のときの呼び名。
王安石、失意のころの詩。この後、宰相となり「新法」を実施。地主や豪商などの利益と衝突するため、猛烈な反撃を受ける。文章家としての有名で、唐宋八大家のひとり。
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