「横書き」と「縦書き」 どちらが書きやすいか?
[text:蓬田修一]
執筆するとき、多くの場合が横書きだと思います。パソコンやタブレットでの文字入力と表示は横書きが基本ですし、雑誌も横書きが多く、ビジネス文書はほぼ100%が横書きです。
思えば、ワープロ、その後に続くパソコンの普及以前は、今ほど横書きが一般的ではなかったようです。手書き時代、出版物だけでなく、文書やメモでも縦書きは割と普通に目にしていた記憶があります。
さて、原稿の執筆にあたって、縦書きがいいか、横書きがいいかについてですが、媒体に掲載する予定であれば、媒体の体裁にあわせて書くのがいいと思います。そのほうが、私の場合は執筆が進みます。
編集者は、媒体の体裁を縦書きにするのか、あるいは横書きにするかのかについては、媒体のコンセプト、掲載記事の内容、読者ターゲット、媒体全体のイメージなどから総合的に判断します。
媒体はそうしたプロセスを経て制作されますから、執筆段階でも最終的な掲載体裁にあわせて作業を進めたほうが書きやすく、また媒体のイメージやコンセプトに一層沿ったものとなり、クオリティが高くなるというのが実感です。
一方、特に発表する媒体が決まっていないで執筆する場合は、縦書きでも横書きでも、自分が書き進めやすいほうで宜しいと思います。数字や英文字が多い文章では横書きが書きやすいでしょう。
経験から言いますと、執筆する内容にもよるかもしれませんが、縦書きのほうが筆が進みます。その理由は、日本語の特性から来てきるのだと考えています。
日本語は歴史的・伝統的に縦書きでした。日本語には漢字、ひらがな、カタカナがありますが、いずれの文字も上から下へと書きます。漢字でしたら、まず冠を書いてその下の部分を書きます。偏とつくりでできている漢字の場合でも、偏は上にある部分をまず書いてそれから下の部分を書きますし、つくりでも同様です。ひらがなとカタカナにおいても、上から下へ書くという事情は同じです。
日本語の文字には、英語などとは違い「上から下へ」という引力のようなものが働いています。そうした文字で構成される文章にも、「上から下へ」という引力があり、そのことが縦書きの書きやすさにつながっているのではないかと個人的には思っています。
縦書きしたときと、横書きしたときとでは、執筆する際の心理状態が意外と違うものです。普段、横書きしかしていなかった人も、ときには縦書きしてみると、新たな発見があるかもしれません。