夏の和歌 いそのかみ ふるきみやこの 郭公(ほととぎす) 素性(そせい)
こんにちは
宮川です。
今回も、夏の和歌を鑑賞して参りましょう!
いそのかみ ふるきみやこの 郭公(ほととぎす)
こえばかりこそ 昔(むかし)なりけれ
この和歌は古今和歌集に収められています。
作者は、平安時代前期から中期にかけての歌人・僧侶である素性(そせい)です。彼は三十六歌仙の一人です。
歌の意味は、
いそのかみの古都で鳴くほととぎすよ。
お前たちの声だけは、昔栄えていたころと少しも変わらないけれど、ほかのすべては変わってしまって、栄えた日の面影はないよ
です。
「いそのかみ」は地名で、現在の奈良県天理市石上です。枕詞で「古き」にかかります。
「声ばかりこそ昔なりけれ」の、「こそ」は係り結びで、「けり」の「已然形(いぜんけい)」の「けれ」と結びついています。意味は強調です。
この和歌には
奈良の石上寺にてほととぎすの鳴くをよめる
という詞書(和歌の前につけ、作歌の時、場所などを簡単に説明する文章)があります。
さかんに鳴きわたるほとどきすの響く声を聞くと、声だけは昔のそのまま。
でも、あたりの風物はすべて昔とすっかり変わってしまった
と、いう余韻が、この歌には込められています。
私事ですけれど、うちの近所には雑木林があって、毎春うぐいすが私たちの耳を楽しませていました。
とうとう去年、伐採され、すっかり造成されて、住宅地と姿を変えました。
いまは新しい家が建つのを待つばかりです。うぐいすの鳴き声もありません。
こういう変化を見たら、素性はどんな歌を詠むのかなあと、思います。
いかがでしたしょうか?
これからも素敵な和歌を、ご一緒に鑑賞して参りましょう!
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