春の歌 「年のうちに 春は来(き)にけり」 古今和歌集 在原元方(ありはらのもとかた)
ふるとしに春たちける日よめる
年のうちに
春は来(き)にけり
ひととせを
去年(こぞ)とやいはむ
今年(ことし)とやいはむ
古今和歌集 在原元方(ありはらのもとかた)
[現代語訳]
新年になる前に立春を迎えた日に詠んだ歌
年内のうちに 春が訪れた この一年を
去年と呼んだらいいのだろうか
今年と呼んだらいいのだろうか
[ひとこと解説]
「立春」は春の始まりであり、新年の始まりでもあります。
今の暦だと立春は2月4日頃です。
一方、陰暦では12月後半から1月前半です。
だいたい1月1日ごろに立春がめぐってきたのですが、12月中に立春になると、年が明けないうちに「新春」を迎えたことになって、旧年中に新年を迎えたような感覚になります。
この歌は、そのときの感覚を詠っています。
理屈っぽいといえば理屈っぽいですが、時間感覚の遊びとして、優れていると思います。
[訳・文:蓬田修一]
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