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新春の漢詩 「士峰」 江戸 新井白石



[text:蓬田修一]

[漢文]

士峰  江戸 新井白石

忽見未知嶽
杳然如雲望
倚天千仞立
抜地八州分
晴雪粉堪画
長烟篆作文
有時仙客到
笙鶴月中聞

[書き下し]

士峰(しほう) 江戸 新井白石

忽(たちま)ち見る未知の嶽(がく)
杳然(ようぜん)として雲を望むが如(ごと)し
天に倚(よ)りて千仞(せんじん)立ち
地を抜いて八州(はっしゅう)分(わ)かる
晴雪(せいせつ)粉(ふん)は画(えが)くに堪(た)え
長烟(ちょうえん)篆(てん)は文(ぶん)を作(な)す
時有りてか仙客(せんかく)到り
笙鶴(しょうかく)を月中(げっちゅう)に聞かん

[現代語訳]

士峰(しほう) 江戸 新井白石

にわかに目に入ったのは見知らぬ巨大な山
ぼんやりと雲を望むようだ
天にそびえること千仞(せんじん)の高さ
大地から抜け出し八州(はっしゅう)に分かれる
晴れた雪の白さは絵のようで
長くたなびく煙はくねる篆字(てんじ)のようだ
ときに来たのは仙人の王子喬(おうしきょう)
鶴に乗って奏でる笙(しょう)の音が月光の中に聞こえる

新春にちなみ、富士山を詠った詩を取り上げた。尾聯(第七・八句)は、仙人の王子喬(おうしきょう)が、笙(しょう)を奏でながら鶴に乗ってやって来るという故事にちなむ。


 

Posted on 2014-12-24 | Category : コラム, 漢文のこころ | | Comments Closed
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