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夜は執筆しない


[text:蓬田修一]

1日のうち、いつ執筆するのが効率的かというのは人によるでしょうが、私の経験では朝が向いています。朝、起きたときは、気分がすっきりしていますし、頭も冴えています。生活リズムに無理が出ないようにしながら、できるだけ早起きするようにしています。

私は朝5時くらいに起床します。もっと早く起きるときも結構あります。7時に朝食を取りますので、それまで読書と執筆を行います。

早朝の時間は頭が冴えていますから、少し難しい内容の本を読むようにしています。頭が冴えた時間を有効に使いたいからです。「少し難しい」というのがポイントで、背伸びして今の自分の実力よりもかなり高いレベルの本を読んでも理解できず、結局時間のムダになってしまいます。

夜は執筆しないようにしています。作家の佐藤優氏も同様のことを述べていました。『読書の技法』242ページに「夜は、極力、執筆活動は行わない」と書いてあります。夜は感情が高揚していて、文章の論理性が崩れてしまいがちです。そのことは佐藤氏も指摘しています。

佐藤氏は、夜は執筆しないということをドイツの神学者ディートリヒ・ボンヘッファーの著作から学んだと言います。ボンヘッファーは「夜は悪魔の支配する時間なので、夜中に原稿を書いてはいけない。夜中に原稿を書くことを余儀なくされた場合、翌日太陽の光の下でもう一度その原稿を読み直してみること」と述べていると同書にあります。

ボンヘッファーの意見について、佐藤氏は「確かにその通り」だと言っていますし、私もこの考えとまったく同じです。過去の経験を思い出しても、夜中に執筆した原稿は、翌朝読み返してみると、論理の展開も文章の流れも悪いことが多いです。

夜は感情が高ぶっていますので、文学的な文章、例えば緻密な論理構造がさほど必要でない、俳句、短歌、詩、歌詞などの散文を書いてみるのは面白そうです。私はこれまで文学的な文章はあまり書いていませんが、感情が過剰な夜に書いてみると、どんなものが書き上がるか興味あります。今度、試してみたいと思います。

(2014年12月9日)

Posted on 2014-12-09 | Category : コラム, ワンランク上の文章へ | | Comments Closed
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