美術館嫌い?!篠山紀信の写真力
空間力との対決
東京ドームシティのGallery AaMoで開催された「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN The Last Show」を見た読者さんから、こんなメッセージをいただきました。
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篠山紀信がスゴイと思うところは、本人よりも本人らしく撮るところ。
表情もポーズも、この人以外に考えにくいと思わせる。
媒体の性質にも合わせるから、実は表現が多様。
それが篠山紀信の真骨頂。
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日本を代表するカメラマン、篠山紀信。若い人たちはどうなのか知りませんが、中年以降の世代にとっては、知らない人はいないでしょう。わたしもGallery AaMoに見に行きました。
メッセージをくれた読者さんの「媒体の性質に合わせるから表現が多様」っていう見方、この方は良く作品を見ているし、媒体(=メディア)と掲載写真との関係性からも鑑賞できるアプローチを備えていらっしゃることに、とても感心しました。
個人的には、わたしもメディアの世界に身を置いていることもあり、篠山紀信という写真家には大きな関心があります。同時に、篠山紀信はとても希有な存在のカメラマンだと思っています。
アート的な作品を撮るカメラマンはいますが、篠山紀信はそうした方向性では写真を撮らず、デビューから一貫して「商業カメラマン」として活躍しています。
雑誌の編集部から撮影の依頼があり、企画のコンセプトに合わせて撮影して、撮った写真を編集部に納品する。実際はいろいろなケースがあるのでしょうが、基本的にはこの流れです。篠山紀信の記者会見に出たことがありますが、彼自身がこういう意味のことを言っていました。こうした篠山紀信の写真に対する姿勢は、個人的にはとても好感を覚えますし魅力的に感じます。
それから、篠山紀信が美術館に対して感じていることも、とても興味深い。彼は、美術館に展示されている写真のことを「死んでいる写真」って言っていたかなあ? もし間違っていたらごめんなさい。
とにかく、美術展での写真展示を良く思ってないんですね。だから、あれほどの名声を持った写真家ですから、美術館で作品展を開催しようと思えば、これまでできないことはなかったんでしょうが、「美術展は開けないんだ(美術展からお声がかからない)」とも言っていました。
ではなぜ、今回、展覧会を開催したかというと(今回の「篠山紀信展 写真力 HE PEOPLE by KISHIN」は、2012年から全国の美術館など32会場を巡回した)、写真をただ展示するのではなくて、写真と(美術館の)空間との対決を目論んでいたようです。
巨大に引き伸ばした写真と、それを展示する美術館の大きな空間。逆に言えば、空間に負けないよう、写真を単純に巨大に引き伸ばしただけ、と言ったら言い過ぎでしょうか?? でも、そんな直球な手法が篠山紀信先生のエネルギーを物語っているようでした。