【第17回】ICTキャンパス 名古屋大学「eラーニングシステム ”NUCT” を全学展開」




「Sakai」ベースにシステム開発
名古屋大学はeラーニングシステム「NUCT」(Nagoya University Collaboration and course Tools)を平成22年から運用している。

同大学では平成10年に情報メディア教育センターを設置し、教材作成を支援するため、コース管理システム「WebCT」の日本語化や利活用法に関する研究開発を行ってきた。その後、WebCTは情報メディア教育システムの一部として導入されたが、WebCTのライセンス供与終了が予告され、後継システムの検討に入った。

検討では、将来にわたるライセンス費用、開発言語、OS、認証システム、データベースシステムの共通化など様々な観点から議論を重ねた。

そうして開発されたのがNUCTだ。これは、海外の大学などが推進する教育ソフトウェア開発プロジェクト「Sakai」のプログラムをベースにしている。

教員はNUCT上に授業空間(これを「講義サイト」と呼んでいる)を開設し、授業で使う教材や資料をアップロードしたり、テストを作成する。

一方、受講登録された学生は、パソコンなどから講義サイトにログインし、教材を閲覧したり、テストを受けたりすることができる。

大学側ではシステムのバージョンアップを随時行い、利用の便宜を高めるとともに、様々な利活用法を提案してきている。

こうした大学側の取組もあり、NUCTの運用開始以来、講義サイト数は順調に増え、学生の利用も増加しているという。

NUCTマイワークスペース
名古屋大学のeラーニングシステム「NUCT」に おける「マイネットワーク」と呼ばれてる画面。ユーザーにとってトップ画面的な機能を果たす。UNCTに関する最新情報や利用案内を掲載する。

教員の利用が多い課題提出と成績管理
大学側が教員を対象に、これまでの利用状況について調査したところ、課題提出管理と成績管理が多いことが分かった。

これは、NUCTのログインIDや学籍番号が表示されることで、学生の学習状態を把握しやすいことが理由だと考えられている。ほかにも、メッセージ通知機能や教材提示機能の利用が増加している。

タブレット端末向けの表示機能については、「PCが設置されている端末室以外でも利用できるのがいい」「授業でipadを利用しているので便利」「採点操作が楽」などと評価する声が多い。

また「スマホを活用して、即応性の高いアンケートなどを行いたい」といった利用法を考えている教員もいた。
現在は、ほぼすべての講義室に無線LAN環境が構築されているが、無線LAN同時アクセス数の制限からNUCTを十分に利用できない場合もあるため、アクセスポイントを拡充させ、利便性を向上させていくことも検討している。

紙レポートの提出と連携も視野に
一般的に、eラーニングは、導入することよりも、成果を上げながら続けることの方が難しいと言われている。

また、eラーニングを利用したからと言って、学生が突然、勤勉になるという訳でもない。

名古屋大学では、これらの課題の解決を念頭に、今後もNUCTの運用を行っていく考えだ。

今年4月からは、すべての教養教育院(教養課程に相当)開講の全学教育科目および学部開講の科目について、NUCTにサイトを作成し、学生の受講者登録を行っている。

今後は、従来から行われている紙によるレポート提出とNUCTとの連携なども視野に入れたシステムのバージョンアップを計画している。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年5月4日号掲載

(執筆 蓬田修一)







Posted on 2025-08-27 | Category : コラム, 大学教育 | | Comments Closed

【第16回】ICTキャンパス 千歳科学技術大学「eラーニングを予習に活用 反転授業で学生の成績向上」




北海道千歳市にある千歳科学技術大学は、eラーニングを予習に取り入れた反転授業により、学生の成績向上に効果を上げている。

反転授業を行っている授業は、グローバルシステムデザイン学科2年生の必修科目「プログラミングスキル(春学期)」と「オブジェクト指向プログラミング(秋学期)」。プログラミングスキルはC言語を、オブジェクト指向プログラミングはJava言語を取り扱う授業で、履修学生数はそれぞれ約80人である。

同大学ではこれまでにも、学生の能力向上や効果的な授業を実現させるために、科目の増設、TA(Teaching Assistant)の増員、学生が自宅で学習できるようにeラーニングを導入するなどさまざまな施策を行ってきた。しかし、思ったような効果はなかなか上がらなかった。

「これでは学生はいつまでたっても自力でプログラムを書くことができないばかりか、授業における実習時間が有効活用できていないことにもなります。そこで、授業の多くの時間を実習に利用できるようにするため、平成25年度から、それまでブレンド型授業や宿題に用いてきたeラーニングを予習に活用し反転授業を行うことにしました」(千歳科学技術大学グローバルシステムデザイン学科林助教)

学生の予習状況はシステムに記録
現在利用しているeラーニング教材は、すべて大学で作成したものだ。教科書には解説文や図だけではなく、アニメーションを活用し、一層理解しやすくした。平成26年度は解説付きの動画教材も利用した。

eラーニングの演習問題は、穴埋めまたは選択で解答する方式にすることで、採点業務を効率化させ、複数回の実施を可能にした。

学生の教科書の閲覧状況と演習問題への解答状況は、同大学独自のLMS(Learning Management System)に学習履歴として記録される。

教員は学生の学習履歴を確認することで、どのようなところでつまずいているのかを把握でき、授業中、学生にあわせた適切な指導を行うことができるようになった。

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プログラミングで反転授業を取り入れて成果を上げている。実習時間が以前よりも確保でき、発展課題に取り組むことも可能となった

プログラミングへの自信につながる
授業にあたっては、まず学生に対して、eラーニングによる予習を、授業用ポータルサイトの活用とリマインダーメールにより促す。eラーニングで予習をしている期間、学生は大学において対面でTAに質問することもできる。

授業では冒頭に確認テストを行う。確認テストを実施している間、教員は学生の予習状況をLMSで確認する。その後、教員は予習で用いたeラーニング教材やスライドを使い、学生に理解しにくい概念的な内容やつまずきやすい内容を改めて解説していく。

こうした予習を前提とした授業を展開することで、反転授業導入以前に比べ、中間試験と期末試験における学生の成績は、中間層および上位層において向上した。

学生に反転授業による授業について調査したところ、64%が「良い」と回答。また、プログラミングに対する自信については、9%が「かなりプログラムを作れるようになった」、73%が「プログラムを作れるようになった」と回答している。

林助教は「今後は、授業冒頭の確認テストを予習段階でも行えるようにして授業の一層の充実を図っていきたい」と話す。

また、現在LMSに蓄積している学習履歴に加え、学生のプログラミング技能習得につながるデータも蓄積・分析を行い、反転授業を継続していく意向だ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年4月6日号掲載

(執筆 蓬田修一)







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【第15回】ICTキャンパス 大阪経済法科大学「ICカード学生証でキャンパスライフ支援」




大阪府八尾市に本部を置く大阪経済法科大学は1971年に開学。経済学部(経済学科・経営学科)と法学部(法律学科)の2学部3学科を設置し、多彩な進路・目標を目指せる全12のコースを軸に、特色ある教育が行われている。2012年、八尾駅前キャンパスの開校を機に「ICTキャンパス」の整備を推進。学生がキャンパスライフの中でICTを活用できる環境を整えた。

八尾駅前キャンパスは、全館に無線LAN環境を導入。講義室や演習室はもちろん、図書館やコミュニティスペースに至るまでネットワークへのアクセスが可能だ。

学生証は電子マネー機能を搭載したICカードタイプで、多彩な機能を備えている。その1つが出席管理。教室には専用カードリーダーを備え、講義に出席した学生はリーダーにカードを通すことで出席登録を行う。
出席状況はリアルタイムにデータベースに蓄積。学生一人ひとりの出席状況が把握できるため、きめ細やかな修学指導にも活用。証明書発行申請や図書貸出にも対応しており、学内での諸手続がカードひとつでスムーズに行える。

電子マネー「楽天Edy」に対応しているため、学内でのレストランや一部自動販売機での支払いはもちろん、学外の店舗でも利用できる。

さらに、八尾駅前キャンパスでは入室管理システムを導入。演習室などに入る際は、学生証で電子ロックを解錠する。そのため高いセキュリティ性が確保され、夜間のキャンパス開館が可能となり、学生は夜遅くまで安心して学習に励むことができるようになった。

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ICT機器を使った授業風景。学生はICカードの学生証で電子ロックを開錠して教室に入室する。

学生生活全般に及ぶクラウドサービス
同大学のICT活用で、特徴的なのはクラウドサービスの充実。主なサービスは次の通り。

■ポータルサイト

クラウドサービスの総合窓口が「NicePortal」だ。大学の行事予定やお知らせ、学生自身の時間割表などを一元管理。掲示板もある。

■キャリアポートフォリオ

学生個人の成績、出欠、取得資格、課外活動の成績などの情報を集約。希望業界や就職活動の状況なども登録でき、就職指導を受ける際に役立つ。学修の成果物が蓄積できる「マイノート」機能を持ち、自分の成長記録が一目で分かる。

■eラーニング

「I‐Navi」は、ネットを通じて授業の予習や復習、資格試験対策などの学修が可能。講義の理解度を確認するテスト、継続した学習が要求される外国語教育、夏期休業期間中のオンライン集中講義など、幅広い活用が進んでいる。

■Nice JOB System(キャリアサポートナビ)

各企業から寄せられる最新の求人情報やセミナー情報などを集約。

■コミュニケーション

メールや掲示板などを活用して、学生間および教職員とのコミュニケーションが行われている。

今後の課題はスマートフォンやソーシャルメディアへの対応強化。教育やキャンパスライフにおいて、これらを適切に活用していくための環境整備やサポートを検討中だ。

「スマートフォンやソーシャルメディアを、自身の学びやキャリア形成のためのツールとして十分活用できている学生はまだまだ限られていると思う。大学がこうした最新動向をしっかりと捉え、戦略的に教育や学生サービスに取り入れていけるかが今後のテーマになる」と同学情報科学センター事務長代理・平田良作氏は語った。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年3月2日号掲載

(執筆 蓬田修一)







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【第14回】ICTキャンパス 北海道情報大学「”mラーニング環境” 実現を目指す」




北海道情報大学は、平成26年4月から電子教科書を利用した授業を行っている。

同大学では、文部科学省の平成24年度「私立大学教育研究活性化設備整備事業」に採択された「主体的な学びへ導くためのICT環境構築モデルの開発」にもとづき、「主体的学びに導くための実行プラン」を策定して、ICT環境構築モデルの整備を進めている。

策定した実行プランにおいては、モチベーションの十分でない学生を、主体的な学びができる学生へと変えるのが主な目的のひとつとなっている。

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電子教科書を使った講義の様子。現在9教科で実施。
今後、電子教科書を使う科目を増やしていく予定だ。
同学ではモバイルラーニング環境を実現。学生にiPadを配備している。

1・2年生の9科目で 電子教科書を活用
そのために目指しているのが「mラーニング(mobileLearning)環境」の実現だ。その具体策のひとつとして、学生にiPadを支給し、PBL(Project Based Learning)形式のゼミや実習、授業で使えるようにしている。

実行プランに盛り込まれている施策には「iPadを活用したアクティブラーニング」「マルチメディア・アテンション教材の活用」などがあるが、それらとともに計画されているのが「電子教科書と電子教科書配信サービスの利用」だ。

サービス開始の初年度となる26年度は、1・2年生の必修科目で、担当教員の了解が得られた科目について、電子教科書を利用している。

電子教科書を用いている授業は「基礎数学」「プログラミング入門」「メディア技術演習」「医療情報学概論」「医療事務総論」「システム開発基礎2」「情報倫理」「テクノロジーパスポート」「コンピュータ」の9科目。「テクノロジーパスポート」と「コンピュータ」の授業は同一教科書を使っているため、電子教科書の点数としては8点となっている。

電子教科書は、京セラ丸善システムインテグレーションが提供しているクラウド型電子書籍プラットフォーム「BookLooper」を活用している。

BookLooperにはブックマーク、手書きメモ、全文検索などの機能が備わり、利用者にとって利便性が高いほか、管理機能として利用ログの収集やデータ分析も可能になっている。

北海道情報大学事務局長の近藤始氏は「利用ログを収集できることが、他社のプラットフォームにはない特徴だと考えています」と話す。

「増やしてほしい」好意的な意見が多数
電子教科書の利用について、学生は「もっと増やしてほしい」「持ち運びが楽」「教科書すべてがiPadで見られたら、かばんに余裕ができて便利」「ページ数が多い教科書などは電子教科書にしてほしい」というように好意的な意見が多い。

一方、「使いにくい」「書き込みやすさを考えると、電子教科書ではないほうが助かる」「検索機能はあるが、紙の本のような感覚で特定のページを探すのはやりにくい」といった声も寄せられているという。

同大学では今後も、電子教科書を重要なマルチメディア教材のひとつとして扱っていく予定だ。

利用ログの分析も
北海道情報大学学長で、同大学全学教務・FD委員会委員長でもある冨士隆学長は「科目担当教員および出版社と交渉し、電子教科書を使う科目数を増やす予定にしているほか、利用ログの分析や海外の事例研究も行い、電子教材ならではの効果的な利用方法について検討をさらに進めていく考えです」と今後の抱負を語っている。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年2月2日号掲載

(執筆 蓬田修一)







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【第13回】ICTキャンパス 東京農工大学「全国13大学を高品位に結ぶ講義や会議など幅広く活用」




国立大学法人東京農工大学は、府中市に本部を置き、農学部と工学部の2学部および大学院から構成される。

1874年(明治7年)の設立以来、140年の歴史を持っている。

同大学では、従来から衛星通信を利用し、他の国立大学との遠隔講義を実施していた。しかし、機器が老朽化したため、2009年、現在のビデオ会議システムを構築した。

他大学との遠隔講義や年2回の集中講義で活用
北海道から沖縄まで全国の国立大学18校を、高品位の映像と音声で結び、年に2回、集中講義を実施しているほか、大学院においても他大学との遠隔講義を行っている。

相手側に一般的なテレビ会議システムがあれば接続が可能なため、姉妹校との交流、企業との共同研究、学会や講演会といった利用も数多い。

さらに、東京農工大学のキャンパスは府中市と小金井市の2か所にあり離れているため、キャンパス間の会議などでも利用されている。

その他、入学希望者向けオープンキャンパスや新入生オリエンテーション、講演会などで一時的に多くの人数を収容する必要がある場合、近くの教室を結びサブ会場として利用することもある。

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2009年から遠隔会議システムを活用。
多拠点でも双方向でやりとりができ、集中講義や他大学との遠隔講義を行っている

簡単な操作で双方向講義を実現
遠隔講義などでシステムを利用したいときは、場所と日時をネット上から入力するだけで予約が完了する。

利用当日は特に操作は必要なく、予約時間になると自動的にシステムが作動する。

そして、予約時間が終了すると、システムは自動的にシャットダウンする。

「1日あたり2件以上の講義や会議がネットからの予約で利用されています。他のテレビ会議システムとも接続可能で、その場合は予約をしないで利用されることも少なくないため、実際の稼働状況はもっと多いことになります」(東京農工大学総合情報メディアセンター講師櫻田武嗣氏)

システムが利用可能な場所を、同大学では「拠点」と呼び、全国の国立大学18校に合計47か所設置されている。

そのうち東京農工大学にはもっとも多い23の拠点がある。

各拠点には、講師用および受講生用のカメラが2つ設置されており、利用者は簡単な操作でカメラを切り替えることができる。

コンピュータ映像の入力なども、タッチパネルで直感的に操作が可能だ。

システムはポリコム社の製品を採用した。

多数の拠点を接続するための装置である新型のMCU(Multi point Control Unit)の導入は、同大学によれば世界で初。

従来の衛星通信を利用した方式では、少なくとも1週間前には予約しなくてはいけなかった。

しかも、利用料金が都度かかる上に、双方向で会話できるのは4拠点までといった制約があった。新システムでは、これらの不便が解消し、利用者からは好評だ。

モバイル環境を整備し屋外からも講義可能に
全拠点が双方向でやり取りできるため、講義を担当する教員からは「受講中の学生の様子が分かり、問いかけをした際の反応が見られるのがいい」という意見が寄せられている。

「システムを自動化したことなどで、利用者は講義や会議に集中できるようになり、活用が進んだことが大きな成果です。テレビ会議システム利用のハードルを下げることができました」(櫻田氏)

今後はモバイル環境を整備し、屋外にある実習現場からの遠隔講義などを行いたいとしている。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年1月1日号掲載

(執筆 蓬田修一)







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【第12回】ICTキャンパス 武蔵野美術大学美術館・図書館「ミュージアム機能と融合デジタルアーカイブも充実」




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学生の意見を取り入れIT環境を整備

武蔵野美術大学美術館・図書館は、1967年に美術館機能と図書館機能をあわせ持つ「美術資料図書館」として開館した。

その後「書物の森」というコンセプトで設計された図書館が2010年にオープンし、現在に至っている。

館内の蔵書数は美術・デザイン関係を中心に、関連領域や一般書など約28万冊で、開架スペースには10万冊の専門図書が並ぶ。

現在の図書館の建設にあたっては、竣工するまでの過程で学生たちから「こんな図書館があったらいいのに」というアイデアを出してもらい、実際の設備などに反映させていった。

「特に力を入れたのは、アナログのライブラリーを集積するにあたって、IT機能を付加したことと、ミュージアム機能との融合を図ったことです。

これは武蔵野美術大学ならでは取り組みだと思います。

また、貴重書や美術品のデジタルアーカイブも構築し、学習や研究の支援に不可欠な利便性の向上も目指しました」(同館図書資料担当 古賀祐馬氏)

デジタルサイネージにアート情報を流す

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図書館は2010年にオープン。館内には無線LANも整備されている

具体的にどのようなIT設備を整えたのかを、紹介しよう。

まず、エントランスを入った正面に、2台のデジタルのインフォメーションボードを設置した。このボードには、学内や館内のイベント、美術館・図書館のコレクション、首都圏近郊の展覧会情報などが常時映し出されている。

また「ブックタッチ」と呼ばれるIT機器も導入した。

資料をかざすとその資料に関する情報だけではなく、図書館所蔵の関連資料(おすすめの本、同著者の本、同分野の本)や展覧会の情報も表示されるものだ。

ブックタッチを使用することで、従来は関連資料を探す際OPAC(蔵書検索システム)で何度も検索しなければならなかったものが、関連資料のリンクをたどるだけで見つけ出せるようになった。

あわせて、どの学科の学生が何回利用したかも表示されるため、学科間の情報交換にも活用されているという。

画像の取り込み・加工図書館内で可能に

学生が学習するスペースのIT環境も整備した。

「情報加工スペース」には、PCとスキャナーを置き、画像の取り込みや加工処理ができるようにした。

「WEBスペース」では、インターネット閲覧用端末によって、自由にネットを見ることができる。

また「卒業制作・修了制作 優秀賞受賞作品デジタル・アーカイブ」も構築。過去50年間(1962年~2012年)の優秀賞受賞作品がタッチ操作で閲覧できる。

冊子体では見つけるのに時間がかかった先輩たちの作品も、このアーカイブによって簡単な操作で探せるようになった。

IT整備は好評高い学生の利用率

こうしたIT設備は学生からも好評で、中でも「ブックタッチ」「情報加工スペース」「卒業制作・修了制作 優秀賞受賞作品デジタル・アーカイブ」は特に利用率が高いという。

今後も学生や研究者に有益なサービスが提供できるよう、IT環境の整備には力を入れていく考えだ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2014年12月8日号掲載

(執筆 蓬田修一)




Posted on 2025-08-10 | Category : コラム, 大学教育 | | Comments Closed

【第11回】ICTキャンパス 奈良先端科学技術大学院大学附属図書館「授業映像をアーカイブ 電子資料との連携も視野」




奈良先端科学技術大学院大学は、学部を置かない国立の大学院大学だ。情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を持つ。附属図書館は、各研究科の教育・学術研究活動を支援するために設立された。図書の貸出および返却は24時間いつでも利用可能だ。

附属図書館では、必要な学術情報を迅速に利用者へ提供するため、「電子図書館」も構築し、図書、雑誌、論文、授業映像などのデジタルコンテンツを、ネットワークを介して提供している。ここでは、同附属図書館が取り組んでいる「授業映像アーカイブシステム」について紹介しよう。

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教室に設置されたカメラ

授業を自動録画 使用スライドも収録

附属図書館では当初、学術雑誌・書籍・学位論文の電子化を行い利用者に提供してきた。しかし2004年頃から、学術雑誌の出版社が自社で電子化しコンテンツを提供するようになると、附属図書館で行う電子化にあたっての許諾が得にくくなり、雑誌や書籍の電子コンテンツの充実が図りにくくなってきたという。
そこで、大学の電子図書館ならではの新サービスとして、授業の映像と授業中にスクリーンに映し出されるスライド資料を電子化・アーカイブ化し、インターネットを通じ閲覧できるサービスを提供することにした。

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講義アーカイブの画面

また、授業は学生と担当教員のみの閉鎖的な空間で行われており、第三者の目が届きにくい。授業映像のアーカイブシステムを導入し授業の様子を公開することによって、授業の「質」に対する教員の意識を高める目的もあった。

授業の録画は、自動撮影システムにスケジュールを登録することで、教室に設置したカメラが自動的に撮影し記録を行う。その後、記録された映像を図書館員が編集し、公開している。授業に用いられるスライドは、教員が利用するPCからプロジェクタに送られる信号を記録し自動的に収録する。授業終了後、授業映像とスライド映像が自動的に同期され、ひとつの授業映像コンテンツとして記録される。

また、スライド映像からスライドタイトルと本文を文字認識することで、電子図書館システムの全文検索機能にも対応させている。アーカイブの授業映像のうち、約1割は学外者でも閲覧が可能になっている。

授業アーカイブシステムへのアクセス数は、ここ5年間の年平均で約3万5000件。授業の開講数が多い4月から12月にかけて、アクセスが多くなる傾向にある。

授業映像と電子資料との連携へ

「学生は、授業アーカイブシステムを授業の復習のために利用することが多いようです。また、入学希望者が実際の授業内容を見て、受験するかどうかを決めるために利用することもあると思います。教員にとっては、授業アーカイブシステムによって授業の様子が学内外に公開されますので、それを意識することで、授業の内容を向上させる意欲が高まるのではないかと考えています」(奈良先端科学技術大学院大学教育研究支援部企画総務課小西健氏)

今後は、授業映像と電子化された書籍・論文や、それらに付けられたメモ・付せんなどの資料とを相互に連携させ、電子化資料の本文内容から授業映像を素早く見られるシステムを構築していく意向だ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2014年11月3日号掲載

(執筆 蓬田修一)




Posted on 2025-08-10 | Category : コラム, 大学教育 | | Comments Closed

【第10回】徳島大学附属図書館蔵本分館「学生のタブレット端末と大型タッチディスプレイを連携」 ICTキャンパス 2014年10月6日




ディスカッションが 円滑かつ効率的に

徳島大学附属図書館は、本館と蔵本分館の2館で構成されている。今回紹介する蔵本分館は、医学・歯学・薬学・栄養学・保健学分野等に関する学術資料を所蔵する生命科学系の専門図書館。教育・研究者のみならず病院および地域医療従事者の教育・研究活動を支援している。

蔵本分館では、2012年5月のリニューアルオープン時に、学生の主体的学習を支援する観点からラーニングコモンズ(学生が集まり蔵書や情報機器などを活用して学習できるスペース)を設置するとともにグループ学習室を大幅に増設、ICT環境も整備した。

「生命科学系の教育研究分野では、X線画像、CT・MR画像、人体の3次元構造、病理組織像、生体分子構造モデルなどの画像情報をいかに利活用できるかが重要になってきます」(徳島大学図書館蔵本分館 蔵本利用支援係・国見裕美氏)

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タッチディスプレイを使用してのグループ学習風景

手軽な情報共有でグループ学習の形が一新

そこで、学生のタブレット端末に保存されている情報をグループ学習室に設置した大型タッチディスプレイへ表示し学生間で情報を共有して、ディスカッションやグループワークを円滑かつ効率的に行えるようなICT環境を整えた。

機器を設置するだけでなく、利用する学生に、職員が操作方法を説明したり、無線LAN設定の相談にのるなど、きめ細かく支援している。昨年度におけるグループ学習室の利用者数は延べ2万人を超え、入館者数はリニューアル前と比べて約2倍に増えている。

タブレット端末とタッチディスプレイとを連携したことのメリットを国見氏は次のように話す。

「簡単な操作で共有・保存でき、ディスカッションの流れを止めることなく内容を深められるようになりました。また、ペーパーレスでディスカッションできることもメリットのひとつです」

学生の利用方法は多彩で、タッチディスプレイのホワイトボード機能を用いてディスカッションを行ったり、文書作成ソフトを使い共同で資料を作成したり、プレゼンの練習を行ったりと様々な用途で用いられている。

「手軽、情報共有、ワンストップという3つの点が、グループ学習の形を一新したと思っています」(国見氏)

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テーマ展示の様子。写真は第10回「先人たちに学ぶこと」。「Molecules」(分子模型の回転)のアプリを紹介している

iPadアプリの デモ展示が好評
蔵本分館の1階エントランスホールでは「テーマ展示コーナー」を2012年11月から展開している。同コーナーは、教員監修のもと、旬のテーマや学際的なテーマを取り上げ、関連する図書とiPadアプリを展示するものだ。

iPadと80型タッチディスプレイとを連携させた医療系iPadアプリのデモ展示では、iPad画面を大画面で見ることができるため、アプリの動きがとても分かりやすいとデモを体験した人からは好評だ。

今後は直接利用者のタブレット端末同士で画面共有ができるようにしていくことを検討中だ。利用者が「いつでも・どこでも・手軽に」ICT機器を使えるような環境整備を行い、学生の自主的・主体的な学びの支援を目指していく考えだ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2014年10月6日号掲載

(執筆 蓬田修一)




Posted on 2025-04-07 | Category : コラム, 大学教育 | | Comments Closed

【第9回】中京大学「翻訳支援ソフト活用で実務翻訳者を育成する」 ICTキャンパス 2014年9月1日




「TRADOS」の授業 日本で初の開講

中京大学(名古屋市)国際英語学部国際英語キャリア専攻が今年4月、新たに開設された。同専攻では、高度な英語運用力に学問的裏付けを与え、さらに実践的授業や海外経験による自信を学生に付けさせて「言葉のプロフェッショナル」の育成を目指す。

こうした目的を達成させるため、同専攻では翻訳支援ソフト「TRADOSSTUDIO」(以下、TRADOS)を使った授業を、2015年度に日本で初めて開講する。TRADOSとは、英国に本社を構えるSDL社製のプロ仕様の翻訳支援ソフトで、翻訳実務業界では圧倒的なシェアを誇る。

翻訳業界の必須条件

「翻訳といえば『文芸翻訳』を思い浮かべる人が多いと思いますが、市場規模から言うと、製品マニュアル、ホームページコンテンツ、特許申請書などビジネス現場での翻訳である『実務翻訳』のほうが大きいわけです。しかも実務翻訳の世界では、翻訳支援ソフトTRADOSの使用を条件とする翻訳案件が飛躍的に増えており、このソフトを使いこなせることが実務翻訳者の必須条件になりつつあります」(同専攻中川直志准教授)

海外の大学では、TRADOSの使用法を学ぶ授業や、それを活用し、どのように翻訳するのかといった実践的な授業が数多く開講されている。中川准教授は「翻訳」を掲げる専攻として、TRADOSなしの授業は考えられなかったという。

授業は、SDL社公認トレーナーの資格を有する実務翻訳者がTRADOSの使用方法を教える「翻訳とIT」と、翻訳の実務を教授する「ビジネス翻訳実務」の2科目を開講する。

「翻訳とIT」の授業では、単にソフトの使用方法を教えるだけでなく、TRADOSを使った翻訳を通して技術的な応用力も鍛える。講義を終了した学生には、SDL社による試験を経て、認定証が授与される。
7月5日には、国際英語キャリア専攻の開設を記念して、名古屋キャンパスにおいて、真の国際人を育成する教育のあり方などをテーマに、実務翻訳者らを招いたシンポジウムが開催された。

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今年7月に開催されたシンポジウムの様子

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「TRADOS」を使った授業(イメージ)


ソフトへの習熟通じて

輩出人材を差別化 「高校の関係者らに、TRADOSの翻訳業界における圧倒的な地位について理解してもらうことも目的の一つでした。参加された方々は、TRADOSや当専攻の内容について、強い関心を持ってくれたようです」(中川准教授)

現在、授業開始に向け、SDL社と緊密に連携を取りながら、準備を進めている。中川准教授はTRADOSを活用した授業および同専攻の今後の展開について「言うまでもなく、当専攻はTRADOSだけを学ぶのではありません。『言葉のプロフェッショナル』をキーワードに英語教育者や、国際ビジネスパーソン、さらには研究者の育成までをも視野に入れています。TRADOSの技術を、翻訳を志す学生だけのものにするのではなく、トータルな英語力の一部として位置付け、当専攻が輩出する人材の差別化を図っていきたいと考えています」と語る。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2014年9月1日号掲載

(執筆 蓬田修一)




Posted on 2025-04-07 | Category : コラム, 大学教育 | | Comments Closed

【第8回】広島大学図書館「プリントオンデマンドで 研究成果の海外発信強化」 ICTキャンパス 2014年8月4日




学術機関で日本初 電子書籍から印刷・製本

広島大学図書館は、日本の学術機関としては初めて、米国製のプリントオンデマンドシステム(POD)である「エスプレッソ・ブック・マシン(EBM)」を導入し、電子書籍から1冊単位で冊子体の印刷・製本ができる体制を整えた。

EBMは、世界各国の大学や図書館など60機関で導入されているシステムだ。特徴はサイズがコンパクトなことで、事務用複合機の2~3台分しかない。PDFデータを活用することで、必要部数だけを印刷・製本することが可能となる。

広島大学では2012年11月にEBMの本格運用を開始。試行期間を含め、すでに4タイトルを出版している。

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プリントオンデマンドシステム「エスプレッソ・ブック・マシン(EBM)」

電子化の進展と同時に印刷物が必要な場合も

PODに取り組んでいる背景には、研究論文などの電子化が急速に進む一方で、研究や教育の現場では、印刷物が有効な状況も依然として多いという現状がある。

これまで、1部から印刷・製本できるEBMの特徴を活かし、研究で使用するマニュアル本の1部印刷、会議で使用する回覧資料の3部印刷など、少部数のニーズにも対応してきた。教職員の海外出張時に、電子ファイルとは別に持参する冊子を3時間で10部作製したケースもある。

在庫数を最小に抑え 有償出版が可能

一方、広島大学出版会でも大学図書館に設置されたEBMを活用し、書籍を刊行。例えば「英語の冠詞(増補版)」は、同会が2009年に出版し絶版となっていた書籍を、PODで増補版として刊行したものだ。

また、広島大学学術情報リポジトリで公開していた教材の中で、ダウンロード数が多く、冊子での発行が望まれていた複数の教材を「物理化学Monographシリーズ」という上下巻の教科書としてまとめ、PODで刊行したという例もある。各巻が400ページ以上と分量が多いにも関わらず、価格はそれぞれ1700円と1800円(共に税別)と安価に設定できた。発行3か月で、各約50部ずつの販売実績がある。

研究分野にもよるが、一般的に学術図書においては、発売後3年を過ぎると販売数が見込めない傾向にある。オフセット印刷の場合は販売単価を下げるため、やむを得ず印刷部数を増やし在庫を生む要因となっていた。EBMでは、その都度の印刷・製本が可能なので、在庫数を最小限度に抑えることができる。

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EBMで印刷・製本した教科書や学術書など

クラウドサービスで世界中に提供可能

EBMでは、作製した冊子体の書籍データを専用クラウド「エスプレッソネット」にアップロードすることも可能だ。こうすることで、世界中のEBMで書籍の印刷・製本できるようになる。これは海外の大学図書館などに直接、図書を提供できることを意味する。

国際的にみると、人文社会科学系の研究分野では、冊子体のニーズが依然として高い。今後は、学術情報の海外発信力を高めるためにも「エスプレッソネット」を積極的に活用していく方針だ。

また、広島大学では13年4月、図書館内にライティングセンターを設置し、学生の論文作成のサポートを開始した。ここでもEBMを活用し、研究成果の国際発信を強化させていく考えだ。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2014年8月4日号掲載

(執筆 蓬田修一)




Posted on 2025-04-07 | Category : コラム, 大学教育 | | Comments Closed