【第129回】ICTキャンパス 東洋大学「生成AI活用で新教育システム運用」 2025年3月3日
ChatGPTで対話繰り返し課題や研究を理解
東洋大学INIAD(情報連携学部)は2023年4月、生成AIのChatGPTを組み入れた新たな教育システム「AI-MOP」(AI Management and Operation Platform、AI管理運用プラットフォーム)を開発し導入した。
学生はAI-MOPで対話を繰り返すことで、自身の課題や研究について、深く理解しながら取り組むことができる。主な特徴は次。
Slackベースのユーザーインターフェース
INIADでは、学生と職員とのコミュニケーションプラットフォームとして、全員がSlackを使っている。そこで、直接ChatGPTなどと対話するのではなくて、日ごろ使い慣れているSlackのボット機能によって複数のAIモデルにアクセスできる。
APIによるプログラミング連携
API(Application Programming Interface)(※)により、生成AIをプログラムから呼び出すことができる。AIを使うシステム開発にも活用でき、このスキルは実務でも重要である。
(※)アプリケーションやソフトウェアを連携させるためのインターフェース
トークン管理機能
質問ごとにAIサービスの利用量を可視化。また、公平な利用環境の確保や効率的な利用が促進された。
マルチモデル対応
複数の企業が提供する最新生成AIモデルが利用できる。現在はOpenAI社とAnthropic社の最新AIモデルに対応している。
社会貢献できるアプリ開発が可能に
学生がAI-MOPを活用して作ったアプリを3つ紹介する。
AI Study Map(3年・チーム実習)
学習支援アプリ。学習テーマを入力すると、AIが自動的にマインドマップ型の教材を生成し、学習トピックを表示する。ユーザが各トピックの確認問題に正解すると、その項目を発展させた次の学習トピックが生成される。
☆いにあど なび☆(4年・卒業研究)
INIADの施設案内アプリ。AIに行きたい場所を話しかけると、AIが周辺画像から認識した現在地から目的地までナビゲーション。施錠されたドアを通るときは、AIが判断して自動的に解錠する。
AiDAR for VI(4年・卒業研究)
視覚障害者を支援。スマートフォンのセンサーで障害物までの距離を検知し、AIを用いることで、周囲に何があるかなどの状況を音声で説明する。
思考の深化に役立つ 特性や限界も体験
AI-MOPを開発・導入した背景について、INIAD創設者で東京大学名誉教授の坂村健氏は「生成AIを使うことは、自分の頭で考えないことにはつながらないと考えています。むしろAIとの対話を通じて、自分の考えを深めることができます。実社会でも生成AIの活用は不可避です。学生のうちから適切な活用方法と、AIを積極的に使う姿勢を身につけることが重要です」と話す。
坂村健名誉教授・東京大学
導入から2年近くが経過し、次のような効果が確認されている。
学習意欲の向上
気軽に質問できるようになり、より積極的に学習に取り組む学生が増えた。深夜でも質問できることで、学習の継続性が向上した。
思考力の深化
AIとの対話を通じて、多角的な視点で考える習慣が身についた。回答を単に利用するのではなく、批判的思考力が育成されている。
実践的なAIリテラシーの向上
生成AIの特性や限界を実体験として理解できるようになり、将来の実務での活用を見据えたスキルが身についた。
高い質の成果物を生む パートナーとして活用
学生からは「24時間対応の家庭教師のような存在」「基礎的な質問を気軽にできる」など評価する声が多い。教員からも、学生の理解度の把握や個別指導の充実につながっているという評価を得ている。
導入当初から、AIの回答をそのまま使用する「取って出し」は厳しく禁止してきた。
AIとの対話を通じて理解を深め、よりよい成果を目指すよう、課題によってはAIとの対話ログを提出させるなどの指導も行っている。
また、AIの回答の質は、問いかける側の理解度で決まることも、繰り返し強調してきた。
「学生たちは生成AIを『答えを出してくれる便利なツール』としてではなく、『より深い理解や高い質の成果物を目指すためのパートナー』として活用する姿勢を身につけています。これは私たちが目指していた教育効果そのものであり、大変喜ばしく感じています」
今後はAI-MOPへの最新生成AIモデル対応を継続していくとともに、より多様な学習シーンでの活用を可能にするための機能拡張も予定している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2025年3月3日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第128回】ICTキャンパス 麻布大学「学生が社会連携事業の企画・実施を主体的に担う」 2025年2月3日
高大連携から高大接続 地域連携から社会連携へ
麻布大学は神奈川県相模原市にキャンパスを置き、獣医学部と生命・環境科学部の2学部・6学科を擁する。創立は1890年、大学設立は1950年で、大学名は創立当初、校舎が東京・麻布にあったことに由来する。
同学は2024年4月「高大接続・社会連携プログラム開発センター」を設置した。
「高大連携から高大接続へ、地域連携から社会連携へと本学の取組をより発展させ、麻布出る杭事業および課題解決型学習(PBL)の取組を強化・推進させて、その成果を大学改革に反映させるとともに、本学の魅力の拡大と教育改革につなげることを目的として設置しました」(麻布大学 高大接続・社会連携プログラム開発センター長 前田高志氏)
「麻布出る杭事業」とは、文部科学省の「出る杭を引き出す教育プログラム」(通称、出る杭)に、全国で唯一採択された「動物共生科学ジェネラリスト育成プログラム」のことだ。同学の強みである動物共生科学を主軸に、動物、食品、環境の各分野で研究プロジェクトが行われている。
学生は1年後期から、所属学科に関係なく興味を持った研究プロジェクトに参加。研究したいと思っている意欲的な1年生にとっては魅力的なプログラムだ。
また、高等学校の学習指導要領の改訂にともない、22年度から「総合的な探究の時間」の講義も実施されている。
「学習者が主体的にテーマを決め、それを解決するという総合的な探究の時間は、多くの高校がその取組に苦慮しており、大学や企業と連携したPBLへの関心は非常に高いものがあります。
総合的な探究の時間を切り口として、本学が行っている出る杭事業やPBLに接続できれば、高校の理系教員や生徒に本学を強く印象づけることができます」
変わりゆく橋本のいまをデジタル地図にのこす
高大接続・社会連携プログラム開発センターは昨年、デジタル技術を活用した社会連携事業を実施した。
1つは24年8月に行った市民参加型ワークショップ「麻布大学生と橋本デジタルマッピング」だ。神奈川県相模原市にある橋本地区のいまの魅力をGIS(地理情報システム)を活用してデジタル地図として未来へ残し、まちづくりに貢献しようというものだ。
JR東海が運営する橋本エリアのイノベーション創出促進拠点「FUN+TECH LABO(ファンタステックラボ)」との共催事業として実施。橋本駅周辺では現在、27年のリニア中央新幹線の新駅開業を見据え、新たなまちづくりを目指して、様々な整備計画が進められている。
地域住民の多くが、まちの姿が日々変化し続け、愛着あるまちの風景が変わりゆくことに驚きや寂しさを感じている。同時に、今あるまちの魅力を何らかの形で残していきたいという思いをもつ人も少なくない。
そこで、今回のワークショップを立ち上げ、麻布大学の学生がまちの魅力や思い出をデジタル地図として未来に残していく手法を、ワークショップで伝えた。参加者はまちに出て、思い思いの場所を撮影し、撮影後は参加者同士でそれぞれの画像を共有した。
公園の生き物を観察してiNaturalistに投稿
ワークショップでは学生スタッフがマンツーマンでiNaturalistの使い方を参加者に伝授
同年11月には、社会連携事業の第2弾として、神奈川県立相模三川公園(海老名市)で「スマホ片手で生き物記録~iNaturalistで県立相模三川公園を世界につなげる」を実施した。
麻布大学の高大接続・社会連携プログラム開発センター、県立相模三川公園の指定管理者である神奈川県公園協会、サカタのタネグリーンサービスの3者による共同主催事業で、麻布大学生命・環境科学部の学生がプログラムの企画・実施を主体的に担った。
プログラムには普段から相模三川公園を利用している住民ら11人が参加。学生がマンツーマンで、誰もが生物の観察記録を投稿できるSNS「iNaturalist」の使い方を伝えた。その後、参加者はペアになって公園内の生き物を観察、撮影してiNaturalistに投稿。約1時間の観察で250ほどの観察データが投稿された。
神奈川県公園協会と麻布大学は今後も協働して、iNaturalistを活用した自然観察プログラムを相模三川公園以外の県立公園でも実施していく意向だ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2025年2月3日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第127回】ICTキャンパス ZEN大学「大規模オンライン大学を開学」 2025年1月2日
279科目を開設多分野を横断的に学ぶ
オンライン環境と現場体験を融合した通信制大学「ZEN大学」が2025年4月に開学する。
ネットの通信制高校(N高等学校・S高等学校)を運営する一社・ドワンゴと、若者支援に実績を持つ日本財団が提携して運営する。
1学年の入学定員は3500人。2024年12月18日、同学は出願者数が2000人を突破したことを発表した。系属校であるN高等学校・S高等学校の生徒の割合は全体の52%。専願率は90%と高い。
学部は「知能情報社会学部」のみ。学問領域を超えた6分野「数理」「情報」「文化・思想」「社会・ネットワーク」「経済・マーケット」「デジタル産業」から学ぶ。
開設される講座は合計279科目で、興味のあるものを選択できる。大半の講座がオンデマンドとなっており、自分のペースで学ぶことができる。
教員と対話できるゼミ形式の講座も30科目を開設。学生が自らアウトプットできる環境も整えた。入学選考は志望理由・小論文。
必修科目の履修に必要となる基礎学力が不足している学生に対しては、補習授業やオンデマンド教材を提供して学びをサポート。授業料は38万円(1年間)。ZEN大学の系属高となるN高とS高の生徒は、入学検定料・入学金(合計6万6000円)が基本的に全額免除となる。
オンラインと体験を融合
日本財団の支援で課外プログラムを実施
特徴的な講座として、「AI」「デジタル産業」「pixiv(ピクシブ)提携」がある。「AI」は、AI時代に生きるためのスキルを、理論から応用まで学び、ゲーム制作の基礎やデジタル産業の歴史なども学ぶ。「pixiv」は、イラスト、マンガ、小説の投稿SNSであるpixivで活動する人気クリエーターらによる講座で20科目を開講。学びと創作の場を創出する。
現場体験を通じて実際の社会が学べるよう、国内外における課外プログラムも重視。学生の経済的負担をできるだけ抑えて、中長期の課外プログラムに参加できるように日本財団がサポートするという。
日本財団の笹川順平専務理事は「社会に出る前の4年間、知識を得るだけでなく、その知識を応用して実際の社会で活かせるのか、自分は何に興味・関心があるのか、社会でどういう生き方をしていくのか、様々な準備をしてほしい」と話す。
ドワンゴ顧問の川上量生氏は「日本では所得が比較的多い世帯の子供は、実家から国立大学に通い、地方の所得が低い世帯の子供は、親元から離れ、仕送りをもらいながら私立大学に通うという、所得における逆格差が存在している。これが日本の大学進学率の低さの背景にある。本学はこうした格差を解決する可能性がある」と話した。
同学の若山正人学長は「学生の新しい可能性を引き出すため、これまで準備してきた。今後も学生たちの探究力を盛り上げる環境づくりに力を入れる」と語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2025年1月2日号掲載
(執筆 蓬田修一)
第126回ICTキャンパス 青山学院大学「ビズリーチ・キャンパス活用で学生のOB・OG訪問が増加」 2024年12月2日
企業から提供されるOB・OG情報が減少
青山学院大学は2023年度から学生のキャリア支援として、OB・OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」を大学の公認サービスとして導入している。
本サービスは学生がスマートフォンアプリなどから、自分の志向にあったOB・OGや、同じ学部出身のOB・OGを探して、直接訪問依頼をしたり、オンライン面談を行ったりできるシステムだ。
学生にとってOB・OG訪問は、自身の将来のキャリアを考える際、実際に社会で活躍している社会人の話が直接聞ける貴重な機会だ。OB・OG訪問について、青山学院大学の進路・就職センターでは近年、次のような課題を抱えていた。
●企業から提供されるOB・OG人数が、社員の個人情報の取扱いの観点から減少している。
●同センターでは、学生が卒業するとき、後輩のためにボランティアとしてOB・OG訪問の協力を依頼している。協力に同意した卒業生は「就職アドバイザー」として多数登録されているが、経年により登録者の最新情報の更新には、注意が必要となっている。
●そもそも、学生は進路・就職センターの窓口に来なければ、企業から提供されるOB・OG情報や就職アドバイザーの情報が入手できず、窓口の業務時間外や学生の帰省時にはセンターを利用できない。
●手続きをした学生のOB・OG訪問が成立しているかどうか、またはトラブルはないかなどの実態把握がしにくい。
こうした課題の解消を主な目的に本サービスを活用。17年から学生個人として利用がみられたが、22年に大学として試験的に導入し、23年から大学公認サービスとなった。
ビズリーチ・キャンパス面接対策講座を開催。多数の参加があった
OB・OG登録者数が2倍以上に増加
本サービス導入により、学生のOB・OG訪問がより活性化した。
登録者数は、公認前に比べて2倍以上に増加。学生の訪問依頼件数は約1・7倍に、また企業の訪問承諾件数は約1・8倍に増えた。承諾率も60%を超えている。
「大学公認のサービスであることから、学生、OB・OG双方ともに信頼を寄せているのだと思います。クレームもこれまで届いておらず、学生・大学側とOB・OGとの関係性が向上していると考えています」(青山学院大学進路・就職センター・平井昇氏)
お互いの連絡先を交換せずに訪問依頼から実施までシステム内で完結する。お互いのやり取りは24時間、有人によって監視され、メッセージにNGワードがあった場合は非表示となる。こうした安心感や安全性も、活用度の高さにつながっているようだ。
二極化が進む就活への取組
進路・就職センターはキャリア支援関連セミナーを開催しているが、近年はセミナーへ参加する学生が減少しているという。
「その理由のひとつは、自分自身で積極的に情報を入手して就職活動を進める学生が増えたことです。歓迎すべきことですが、一方で就職活動に対してスロースタートな学生、思うように就職活動が進まずモチベーションが下がってしまう学生もいて、二極化が進んでいます」
同センターでは特に後者の学生に対して、個別相談などを行い積極的に支援していく。
「学生は就職に関して、自分のやりたい仕事を求めつつも、ライフ・ワーク・バランスを重視した企業選びや働き方を志向しています。大手企業への就職にもこだわらず、また転職もいとわない傾向にあります」
同学ではこれまで、卒業生で組織する「青山学院校友会大学部会 在校生就職支援委員会」と連携して、模擬面接会、業界研究セミナー、悩み相談交流会などを実施。参加した学生からも好評だ。
将来的には、校友会とビズリーチ・キャンパスのそれぞれのOB・OGが連携して、「オール青山」で学生の支援にあたってもらえることを期待している。
平井氏によれば、学生は総じて素直であり、コミュニケーション力や他者を巻き込む力にも富んでいるという評価を受けているという。
「そうした良さを活かしつつ、さらに様々な経験を積んで卒業後も活躍してほしい」と学生と卒業生にエールを送る。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年12月2日号掲載
(執筆 蓬田修一)
第125回ICTキャンパス 東京理科大学「全学導入に向けてオープンバッジを推進中」 2024年11月5日
長期ビジョン具体化施策のひとつとして導入
東京理科大学は7学部・33学科、7研究科・30専攻で構成され、学生数は学部、大学院、専門職大学院を合わせて2万人を超える(2024年5月1日現在)。
2031年に創立150周年を迎えるにあたり、長期ビジョン「TUS VISION 150」を策定した。日本の先端技術を駆使し、イノベーション創出に貢献する人材の育成などが、その内容だ。
ビジョンの具体化に向け様々な施策を行っており、その1つに、オープンバッジの活用がある。オープンバッジとは、国際的な技術標準規格で発行されるデジタル証明・認証のこと。
このバッジを履歴書、メールの署名、SNSの投稿などに貼り付けることで、身につけた資格や技能、知識などをアピールでき、就職活動や仕事において、より多くのチャンスの獲得につなげることができる。ブロックチェーン技術を搭載し、偽造や改ざんも防止できる。
オープンバッジのデザインは盾をイメージ
法人と大学双方の職員で事務局を設置
オープンバッジを導入した背景は、22年度に大学法人の理事長が大学事務職員に向けて、業務改善・新規施策の提案を募集したことにある。
47件の応募の中から「社会に示す『TUSオープンバッジ』の推進」が最優秀賞(理事長賞)となり、オープンバッジの導入につながった。
オープンバッジを管理・運営していくため、法人と大学の双方から職員が選出され、専門の事務局が設置された。
事務局のメンバーは様々な部署や立場の職員であり、個人の強みや業務経験を活かしたアイデアや発想で業務に取り組んでいる。
オープンバッジ導入は、大学の事務総局長が後押ししたプロジェクトでもあるため、職員間での理解が得られやすいという。
「事務局は職務分掌に定めのない、いわばバーチャルな組織ということもあり、気軽な議論ができています。現状はうまく回っていますが、将来的にはどこかの部局に業務として定着させるか、処理作業を外部に委託する必要があると感じています」(東京理科大学オープンバッジ事務局・増田充利氏)
現在は事務局を中心に、オープンバッジの全学導入、運用の効率化に向けて取り組んでいる。
学部・研究科などが独自にバッジを付与
オープンバッジの付与は、学部・研究科などの判断で発行できるようにして、自由な利活用を促している。
付与の対象となるのは①東京理科大学の機構、学部・研究科などが実施する、同大学の教育研究活動に資するプログラム②研究、学業、課外活動における優れた成果であり、いずれも正課内・正課外を問わない。
大学の責任のもと発行していることを明確にするため、バッジの基本デザインは事務局側で作成し、バッジの統一性を担保した。盾をイメージしたベーシックな形状とし、バッジ面の星印(1個~4個)でレベル感を表現した(星印が多いほどレベル感が高い)。
バッジのカテゴリーは①スキル証明(身につけた能力)②修了証明(主に教育課程の修了)③受講証明(教育課程外の受講)④表彰(挙げた成果)の4つを設定。
導入初年度である23年度の発行実績は、修了証明3612件、表彰190件であった(スキル証明と受講証明は発行実績なし)。
修了証明が多いのは、学部1年生から大学院生までが学べるデータサイエンス教育プログラムの修了者にオープンバッジを付与したことによる。
大学側で厳格に管理しつつ多様なバッジを発行したい
24年度は社会人教育やリカレントの講座受講者も付与の対象にし、25年度は教育課程・課程外の取組にも発行対象を拡大させる予定。
26年度はそれまでに付与した件数や付与条件を検証し、発行可能な事業の掘り起こしなど新たな施策を展開していく計画だ。
増田氏は「企業においても社員への発行だけでなく、例えばインターンシップをやり遂げた学生へのバッジの発行や、採用活動においての履歴書などでは、可視化されなかった能力の発見という視点でぜひとも活用頂きたいと思います。今後は教職員を対象とするバッジの発行も検討する可能性もあります。大学として厳格に管理しながらも、なるべく多様なバッジの発行につなげたいと考えています」と抱負を語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年11月5日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第124回】ICTキャンパス 和洋女子大学「AIライフデザイン学部新設 生成AIアバターで学校案内」 2024年10月8日
既存専門分野とAIを融合 AIの使い手を育成
1897(明治30)年、和洋裁縫女学院として創設された和洋女子大学は、女性の自立が日本の近代化に不可欠であるという考えの下、女性が手に職をつけることにより経済的自立および人間的自立を目指し、女性が収入を得やすい和裁と洋裁を教授した。
建学の精神は「和魂洋才・明朗和順」。近年はこの精神を踏襲しながら、新しい教育目標「人を支える『心』と『技術』を持って行動する女性」を標榜し、社会に出て自立し、活躍できる女性の育成に力を入れている。
千葉県市川市にあるキャンパスは人文学部、国際学部、家政学部、看護学部の4学部。同学が今注力している分野の1つに「生成AI技術の活用」がある。2022年には文部科学大臣から数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)の認定を受け、既に学生に生成系AIを活用した教育プログラムの提供を開始している。26年4月には新たに「AIライフデザイン学部」を開設する予定だ。
新設学部の準備を進める同学全学教育センター・服飾造形学科の鬘谷要(かつらや・かなめ)教授は、「本学が新設するAIライフデザイン学部は、AIの使い手を育成することに徹したカリキュラムであることが特徴です。本学が既に持つ4学部9学科の専門分野の教育をAIと融合させ、幅広い実際の課題へのAI適応について、実践的に学べるようにします」と語る。
企業との協力態勢も整える。企業と共に企業が求めるカリキュラムを開発し、社会で活躍できる人材の育成に力を入れる。
AIに関わるセキュリティーや倫理問題など、AIと正しく安全に付き合う方法についても特に力を入れて教育していく考えだ。
カサナレ株式会社にてアバターを作成
今年6月に実施したオープンキャンパスでは、生成AIアバターによる学校案内サービスを導入した。
東京都渋谷区にある、生成AI分野に特化したスタートアップ企業、カサナレ株式会社と共同開発したものだ。
同社がAIアバターを作成して学内数か所に、AIアバターを組み込んだ大型モニターを設置した。モニター前に立った質問者が画面のAIアバターに問いかけると、瞬時に答えが返ってくるシステムだ。
同学によれば、このような取組は国内大学では初。今回の取組は、新学部「AIライフデザイン学部」の開設に先駆けた実証実験という位置づけでもある。
「本学にオープンキャンパスで来学する高校生とその保護者を始め、広く学内外の生徒・学生に、AIに親しんでもらうことを第一の目的にしています」
オープンキャンパス当日は、多くの高校生が、AIアバターとの会話を楽しんだ。質問内容は、学食のメニューや大学までの道案内といった学生生活に関わることを始め、最近のファッションに関する話題、AIライフデザイン学部など大学の教育内容に関する質問が多かった。
「高校生たちはAIアバターを面白がってくれたようで、AIに馴染んでもらうことができました。現在はAIアバターの学習量と情報量を増やして、AIアバターの対応力を強化させているところです」
今後実施するオープンキャンパスでは、バージョンアップさせたAIアバターと高校生との接触機会を増やして、AIアバターを新学部の象徴的な存在に育てていく計画だ。
AIアバターと対話
AIで世の中を変える人材を輩出したい
鬘谷教授によれば、同学には、優しくおとなしいタイプの学生が多く、卒業したら人の役に立ちたい、人を喜ばせたいと考えている学生が多い。
「本学はややもすると、保守的で守りの気風と言えますが、AIというツールを使って世の中を変えていくような新しい時代の人材を輩出していきたい」
新設するAIライフデザイン学部を起爆剤に、大学全体にAIを浸透させていく考えだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年10月8日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第123回】ICTキャンパス 東北大学病院「医療データを安全に利活用 研究から社会実装まで一貫支援」 2024年9月9日
東北大学病院(宮城県仙台市)
法律に基づいたデータ加工が必要
東北大学病院は2024年2月1日、医療データ利活用センター(MDUC=Medical Data Utilization Center)を設置した。
主に取り扱う医療データは、患者の検査、病名、処方などのカルテ情報といった、個々人の健康や医療に関する情報だ。
医療データ利活用センター長の藤井進氏は、「データはあるだけでは利用できません。まず法律に基づいたデータ加工と品質管理が必要です。例えば、次世代医療基盤法に基づいて加工されたデータを利活用したとき、加工前のデータと比較しても研究結果に影響が出ないことなどが求められます。こうした適正加工した後のデータの品質を検証し高める研究をしています」と話す。
MDUCは基礎技術の開発から製品開発(社会実装)まで、医療データ利活用に関して一貫した支援を行う。
適正化されたデータ活用研究の一例として、AIを使った医療文書の自動生成がある。
「医師の働き方改革など、医師の生産性の向上は喫緊の課題です。AIを使った医療文書の自動生成は、すでにカルテベンダーのオプションとして製品化され、社会実装されています。当センターが理念とする、研究開発から社会実装までの伴走ということを体現した事例の1つです」
また、創薬研究において、適正化された地域や全国のビッグデータを、いかに効率的に活用するかといったデータ抽出技術の向上などの研究も進めている。
データの安全と活用 相反するニーズを両立
大学病院における医療情報の利活用はこれまで、電子カルテなどのシステム構築および運用、セキュリティ対策を中心に情報部門が行ってきた。
医療情報の漏洩やサイバー攻撃を受けないよう、いかに安全に活用するかという点が重要視されてきたわけだ。
しかし、近年はAIなどの技術が進展し、ビッグデータも広く活用されるようになり、その有用性も確認されるようになってきた。
こうした時代背景のもと、医療情報の積極的活用が求められている。
「安全と活用という、相反するニーズを両立させることが、全国の大学病院の情報部門に求められてきています。しかしながら、同じ部門がアクセルとブレーキを同時に踏むわけですから、データの利活用はなかなか進まない現状があります。これは恐らく、多くの大学病院で抱える問題と思っています。当院はこの安全と活用という機能を組織的に分離しガバナンスをとることで、高い次元で異なるニーズを両立させています」
未病から治療後まで 長期間を視野に研究
患者は未病の状態から徐々に体調を崩し、かかりつけ医の受診を経て、大学病院のような急性期治療(発症、受傷、術後直後における医療)を行う病院を受診。
そして大学病院で治療を受け、退院後は地域の病院や在宅で治療を継続するケースも少なくない。
ところが、これまでの医療情報のデータベース化は、大学病院などの急性期医療に偏る傾向があった。
そのため、いつ発症し、薬はいつから飲んでいたのか、退院後はどのような治療を継続し、再発はしたのか、死亡に至っていないかなど、発症から治療、予後までの一連の経過をデータ化することが非常に困難だった。
「今後はこうした一連のデータを取り扱い、長い期間を視野に研究を進めることで、国民の健康維持や健康寿命の延伸、受診行動の最適化・効率化、安心できる在宅での治療と予後を体感できるよう、広い意味でのヘルスケアシステムを提供できるようにしたいと思います。同時に、地域医療の堅持に貢献していくことも大事だと考えます」
そのため、地域や全国のデータを、各種法令に基づいて適切に加工し、研究から製品化・社会実装までMDUCが協力できるプラットフォームづくりを目指す。
この実現のため、MDUCは地域の人たちに、地域にある医療データをどのように扱えば法律的に適正に利活用できるかの具体例を示しながら、医療データの運用が安全に健康増進や治療に役立っていることを体感してもらえるよう、リーダーシップを発揮していく考えだ。
さらに、医療データを用いて、大学病院の研究力を向上させ、企業においては効率的かつ速度感をもって医療データを活用できる環境を用意し、社会実装を通して社会に貢献していく。
「医療データの利活用に関する東北大学病院の役割を明確にし、スタートアップ支援を含む取組を進めることが、社会から求められていると感じています」と抱負を語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年9月9日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第122回】ICTキャンパス 神奈川工科大学「地域連携でeスポーツ『KAIT TOWN』新設」 2024年8月13日
最新高速ゲームマシン完備 対戦をリアルタイム配信
神奈川県厚木市にキャンパスを置く神奈川工科大学は、2023年に創立60周年を迎えた。
24年4月、従来の5学部13学科を3学部10学科8コースに再編し、新たに応用化学生物学科と情報システム学科が誕生。「情報」「環境・エネルギー」「生命」を重点研究分野とする、IT、工学系の総合大学だ。
同学はeスポーツに対して積極的に取り組んでいる。eスポーツの発展と地域活性化を議論するシンポジウムを開くなど、これまでeスポーツ関連事業を積極的に開催してきた。
デジタルゲームはその発展過程のなかで、手元のコントローラーから全身でまとうスーツまで様々なデバイスを使って人間の動きをデジタルワールドに伝えていく「身体性」を持ち、同時に社会的な競技性も帯び始めた。これが「eスポーツ」であり、世界的な盛り上がりをみせている。
24年4月、同学ではキャンパス内にeスポーツと地域連携の拠点となる「KAIT TOWN(カイトタウン)」をオープン。
建物は鉄筋コンクリート造2階建てで、1階の「市民・eスポーツホール」はeスポーツ大会やシンポジウムなどの開催も想定し、最大100人まで収容でき、レーザープロジェクター、大型LEDビジョン、大会用照明などを備える。
地域の子供からシニア層まで幅広い年代の人が利用できるコミュニケーションルームも設けられている。
2階の「eスポーツトレーニング室」には、最新の高速ゲームマシンと27㌅モニター17セット、世界大会規格基準のゲーミングディスク・チェアを32セット完備した。
eスポーツの対戦状況を世界にリアルタイム発信可能な配信・サーバー室も備えた。
eスポーツと地域連携の拠点『KAIT TOWN』
ゲームのマウス操作と競技レベルの関係性を検証
同学の「先進eスポーツ研究センター」では、情報通信技術やスポーツ情報科学を活用したeスポーツの価値を確立するための研究に取り組んでいる。
その1つに、情報学部情報ネットワーク・コミュニケーション学科の塩川茂樹教授が取り組むFPS(First-person shooter)におけるマウス操作と競技レベルとの関係についての検証がある。
FPSとは一人称シューティング競技において操作するキャラクター本人の視点(First-person)でゲーム中の世界・空間を移動し、遠隔武器や魔法などを用いて戦うことを意味する。マウスを使った視点操作では、できるだけ素早く正確に攻撃対象に視点を移動させる必要があり、効率の良いマウス操作が求められる。
研究では、実際の競技におけるマウス操作の軌跡を可視化し、競技レベルとの関連性を検証。結果は、高得点者のマウス軌跡は低得点者の軌跡よりも横に広がり、同じ範囲を移動させていることが分かった。
実験結果を踏まえて、マウス操作の軌跡から競技者や競技者レベルを機械学習によって特定する研究も進めている。
一方、情報学部情報メディア学科の上田麻理准教授は、音や聴覚からのアプローチからeスポーツ研究を進めており、近年は企業の音響機器開発に協力する機会が増えてきたという。
大手の音響機器メーカーやヘッドホン開発を行うメーカーなどが神奈川工科大学を訪れ、eスポーツ競技中の学生に発売前のヘッドホンを試してもらい、競技者としての率直な意見や感想を聞いて、商品開発や販売戦略などに活かしている。
企業からは、企業側では考えつかない、eスポーツ愛好者ならではの貴重な意見が聞けると好評だ。
大学の力を地域へ 地域の力を大学へ
KAIT TOWN内には、大学と地域をつなぐ拠点「地域連携・貢献センター」がある。同センターは、これまで災害や避難に関するミーティング、小中学校への出前講座、リサイクルや環境に関わる事業などを地域とともに展開してきた。
本センターは、学生の持つ力を地域に活かし、同時に地域の持つ力を学生に活かせるようにすることを念頭に置いて活動している。
同学の小川喜道センター長(地域連携・貢献センター)は「これからも地域からのリクエストに応えると同時に、大学から地域に対して、知・技そして夢を提案、提供していきたいと考えています」と、話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年8月13日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第121回】ICTキャンパス 東京藝術大学「分野を超えて共同研究 『文化的処方』を開発」 2024年7月1日
東京藝術大学は2023年度より40の機関(24年6月時点)と連携して「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」をスタートしている。
アート、福祉、医療、テクノロジーの分野の壁を超えて協働的に研究しながら、人々の間につながりをつくる文化・芸術活動「文化的処方」を開発。様々な原因で生じる「孤独・孤立」の解決に取り組んでいる。
同学の伊藤達矢教授(社会連携センター)は、こう語る。
「年齢、性別、文化的背景、障害、経済格差などといった垣根を越えて、多様な人々がフラットに参加できる社会基盤を整えることが『こころの豊かさ』を育むことにつながると考え、『文化的処方』という考え方のもと、社会的制度の提案や各種取組の開発を進めています。
多くの人々が社会に参加できる回路を作り、高齢になっても生産的活動に参加でき、社会へ接続する機会をより増やしていくことで、幸福度の上昇、新しい経済価値の創出、社会保障費の負担の軽減に結び付けていきたいと考えています」
テクノロジーの力で新しい芸術鑑賞体験
共創拠点におけるテクノロジー分野の取組を3つ紹介する(カッコ内は協働企業)。
●網膜投影型視覚支援デバイス(QDレーザ)
視覚障害がある人のアート活動をサポート。レーザー光線を網膜に直接投影することにより視力が極端に低い人でも、人の表情や掲示物を見たり、デジタルカメラを使って撮影したりすることが可能になる。
網膜投影型視覚支援デバイスによりレーザー光線を網膜に直接投影して目が見えにくい場合も見えるようにする
●みどころウォーク(空間体験型VR)(大日本印刷)
バーチャル空間における空間圧縮技術により、限られた実空間で広大な仮想空間を歩き回る体験ができる。単なるVR体験ではなく、人々が共有空間で互いに交流し、芸術作品を鑑賞することができる。
みどころウォーク(空間体験型VR)
●次世代地域コミュニケーションプラットフォームサービス(NTTビジネスソリューションズ)
同社のAIシステムとAmazon Alexaが連携し、高齢者の地域見守りやアートを介した地域コミュニティ活性化、住民のウェルビーイングを高めることを目指す。
アートの持つ創造力で社会課題を発見し対応する。
「社会的な課題は、最初はひっそりと社会のどこかに潜んでおり、誰もフォローに入らないうちに次第に大きくなって、気付いた頃には取り返しのつかないことになっている場合があります。だからこそ課題に気付く力、今必要な物事や必要な何かを自分たちで作り出していく力が必要です。それには人の心を動かすことに何百年も取り組んできたアートが持つ創造力が適していると感じます。異なった分野を結び付け、新しいものを生み出そうとする創造力を医療、行政、企業とともに共有できるアートベースドプラットフォーム(芸術の総合知)で、SDGsの目標期限である2030年以降の持続可能な未来の形を描いていければいきたいです」
こうした創造力は、誰もが持っているもの。しかし多くの人がその存在に気付かずに過ごしているという。共創拠点には川崎市や愛媛県など全国9自治体も参画している。
23年4月、東京藝術大学に横断研究領域「芸術未来研究場」が立ち上がり、その中に「ケア&コミュニケーション」領域が設置された。今回の共創拠点もその領域に位置付けられている。
同学では、ケアとアートとテクノロジーを結びつけた創造力の可能性を、今後さらに追求していく考えだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年7月1日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第120回】ICTキャンパス 福井大学「地域産業に向けて 社会人DX人材を育成」 2024年6月3日
企業の実務家も講師に 就業に直結する授業
全国的に大学を中心とした「学び直し」の取組が広まっている。地方の国立大学ではどのようなリカレント教育を行っているのか。福井大学の取組を紹介する。
福井大学は2キャンパスを持ち、教育学、工学、医学、国際地域学の4学部を設置する。同学では年間50回以上の就職ガイダンスや、学内合同企業説明会などの就職サポートを実施しており、複数学部を有する国立大学において就職率は16年間トップである。
同学では2021年度から、地域産業界や福井県とともに、大学を中心とした産学官金連携によるリカレント教育「私の職業再構築プログラム」を実施している。3回目となる23年度は、DX分野の支援プログラムを、10月・11月の2か月間にわたって無償で実施した。
原則として福井県内の企業などに就職・転職する意思を持つ人を対象に、定員30名で募集。授業は、データ分析、プログラミング、システム開発・設計など就業に直結する内容で、社会人でも受講しやすいように金曜日の夜および土・日曜日を中心に開講した。
講師には福井大学の教員のほか、実務に精通した地元企業の専門家も揃え、コア科目(32時間)、スキル養成科目(40時間)、アプレンティス科目(就業と一体化した専門知識32時間+就業体験等24時間)の合計128時間のカリキュラムで構成した。
同学の竹本拓治教授(地域創生推進本部)は「受講者の確実な学びを実現できるようにクラス担任制によるメンタリング体制を整えました。また、受講者によって理解度に差が生じることが想定される科目では、オンラインコンテンツを用意し授業の補完としたほか、大学院生を中心とした補助者を各授業に配置し、サポート体制を整えました。こうすることで、受講者の確実なスキル習得と、就業先企業からの信頼確保に努めました」と語る。
なお、23年度のプログラムは、文部科学省の「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」にも採択されている。
企業が求める人材は基礎スキルを持つ人
カリキュラム構成にあたり地元企業にヒアリングを行ったところ、入社してくる人材に求めているのは基礎的スキルであり、専門スキルは企業側が入社後、研修によって身に付けさせていることが分かった。
「専門性に特化するより、地元企業の採用水準レベルに焦点を絞りました。サイバーセキュリティといった高度な専門スキルが必要な人材ニーズも限られていることが分かりました」
29人が受講を修了し、26名が就業した(就職・転職者11名、現職継続者15名)。ちなみに、22年度は受講修了者33名で就業者は26名(就職・転職者14名、現職継続者12名)、21年度は27名が受講修了し、就業者は24名であった(就職・転職者17名、現職継続者7名)。
「プログラムの受講修了者は仕事に必要なスキルが身に付き、キャリアの選択肢を広げることができたと思います。福井県は有効求人倍率が全国トップレベルであり、多様な能力を持つ人材が地域の産業を支えることで、経済的な活性化が実現できると期待しています。福井大学にとっても、地域社会への貢献とリカレント教育における実績を通じて、社会における大学の役割を再定義し、その存在感を高めることができると考えています」
2023年度の企業インターンシップ成果発表会の様子
社会人が参加しやすい大学院プログラムの提供へ
竹本教授は「福井県唯一の国立大学として、福井大学は地域の発展に貢献し、地域社会に人材を供給する重要な役割を担っています」と語る。
近年は福井県の支援のもと「地域」と「国際」の両視点を踏まえながら、学生が地域企業や自治体の中に実際に入り、現場で働く人とともに、目の前にある課題の解決に取り組む、地域志向型のPBL(プロジェクトベースドラーニング)に力を入れてきた。
今後は、学部・学科の枠を超えた文理融合の教育をさらに進めるとともに、社会人の再教育を支援するため、社会人が参加しやすい大学院プログラムを提供し、地域社会に積極的に貢献していく考えだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2024年6月3日号掲載
(執筆 蓬田修一)











