【第59回】ICTキャンパス 北海道大学「産学官でAIビジネス創出 札幌のIT産業創出を促す」 2018年12月3日
平成29年、札幌市、北海道大学、市内のIT関連企業などが連携して立ち上げた「Sapporo AI Lab(札幌AIラボ)」では、AI(人工知能)関連技術を活用した新規ビジネスの創出やAI関連人材の育成などの活動を行っている。
近年、大きな広がりを見せているAIを突破口として、札幌市の産学官が連携してIT関連産業の新たな未来を創出することがねらいだ。
札幌AIラボ長は、人工知能の研究者である北海道大学教授の川村秀憲氏だ。
■コールセンター記録でAI自動応答システム
「さっぽろ駅バスNAVI」はチャットボットでよくある質問に対応する
札幌AIラボのリーディングプロジェクトは「札幌市コールセンターデータを活用したAI自動応答システム構築実証事業」だ。
札幌市が運営するコールセンター「ちょっとおしえてコール」には、様々な問い合わせ(制度や手続き、施設、行事、公共交通案内など)が寄せられる。
問い合わせの内容や結果は、個人を特定できないようにして、文字情報として記録。そこでプロジェクトでは、これまでの応対記録約140万件をビッグデータとして活用し、市民からの市政関連の問い合わせにAIが回答するシステムを開発した。
そのうちの1つ「さっぽろ駅バスNAVI」は、スマートフォンやPCなどからLINE上に質問内容を打ち込むとAIが回答する。
プロジェクトの成果物である自然言語解析(固有表現抽出)AIエンジンのソースコード、開発過程で生成した学習済みモデル、学習用データのサンプルなどは公開されており、営利・非営利を問わずダウンロードできる。
「さっぽろ駅バスNAVI」はチャットボットでよくある質問に対応する
■手話をAIが翻訳
「AI×手話プロジェクト」は、手話の動作をカメラで取り込み、AIによってテキストに変換するシステムだ。
薬局で商品を購入するシーンを想定したシステムを、プロトタイプとして開発。このシステムを活用することで、手話が分からない薬剤師ともコミュニケーションを取ることができる。
同プロジェクトには、北海道大学大学院 情報科学研究科の山本雅人教授の研究室が参画。カメラで取得した手話の映像を、AIを使って日本語の文章に変換し伝える部分の開発を担当した。
札幌AIラボは、地元で開催されている映像・音楽・ITの融合イベント「No Maps(ノーマップス)」と連携し、新産業創出の後押しも行っている。
ノーマップスは、札幌および北海道を「実証実験・社会実装の聖地」とすることを目指して開催しているイベントだ。
このほかさっぽろ円山動物園と連携して飼育動物の膨大な生態データを集積・分析することで「動物専門員」にノウハウを提供。
飼育動物の活動性と行動の多様性を高め、野生と同様の行動を引き出し、望ましくない異常な行動を減らすことなどを目指す。
■AI人材を育成
AI人材育成の取組としては大学連携サテライトゼミの実施、AI人材育成のためのワークショップやセミナーの開催、AIを活用したビジネスに関するコーディネート、企業の研究提案と研究者マッチングにも取り組んでいる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年12月3日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第58回】ICTキャンパス 千葉大学「児童生徒の討論を活性化」 2018年11月5日
小学校道徳で「AIAIモンキー」により意見を分析して討論した
児童生徒の討論を活性化 意見分析ツール「AIAIモンキー」
話し合い活動や討論をサポートする
千葉大学は、千葉市に本部を置き、10学部、11研究科を有する国立総合大学だ。
千葉大学教育学部附属中学校長の藤川大祐教授(千葉大学教育学部)は、独自に開発したITツール「AIAIモンキー」を活用し、学生の討論を支援するシステム構築のための試みを行った。
AIAIモンキーは、小学校から大学までの授業における「話し合い活動」や「討論」をサポートするツールだ。藤川教授が株式会社アクティブブレインズとともに開発したもので、「ホットワード分析」と「カテゴリ分類」の機能を持つ。ホットワード分析は、学生が書き込んだ意見を形態素分析し(自然言語を言葉が意味を持つ最小単位にまで分割する技術)、助詞、助動詞、形式名詞など以外の語の登場頻度に応じて、大きさの異なる円で表示する機能だ。
カテゴリ分類については、意見の記入者が、記入時にカテゴリを選ぶようになっている。
授業を担当する教員は、授業の前に「発問」と「意見分類」を入力する。授業では、学生が各自のタブレットやPCを使って、討論テーマに対しての自分の意見を入力。学生の入力が終わり、教員がボタンをクリックすると、学生の意見の分析結果が表示される。
各学生も自分のデバイスの画面で、分析結果やほかの学生の意見を見ることができる。
「形態素解析などを活用した意見分析ツールは、多面的・多角的な議論をするために必要だと考え、このツールを開発した。もともとは、小学校の道徳授業用を想定していた」という。
100人を超える授業でも活用
藤川教授は、昨年10月から今年1月にかけて、大学の授業において、AIAIモンキーを使い、同ツールの可能性を検討した。
授業は、藤川教授が担当する「メディアリテラシー教育」(学部2年生~大学院生が対象)で、受講学生は125人だ。授業は計10回行った。
「100人以上の授業でも、学生は多様な意見に接し、ほかの学生と交流できた。大人数の授業でも、多様な意見を多く採り上げられる点がメリット。学生は、他の学生の意見を読むのが面白いようだ。この方向を突き詰めていくと、教室での討論はSNSでの意見交換に近づく」と語る。
小中学校の道徳でAIAIモンキー活用
平成29年2月から3月にかけて、千葉大学教育学部附属中学校と同小学校において、各2回ずつ、AIAIモンキーと、独自に制作した動画教材を使った道徳の授業を行った。意見分析ツールを利用して、キーワードやカテゴリを入り口に、他の児童生徒の意見を読むことや、自分の意見が読まれることが、児童生徒にとって肯定的に受け止められることが分かった。
今後、AIAIモンキーを活用しながら、初等中等教育での形態素解析を活用した語彙学習に関するシステムの開発も検討している。
今後はAIでレコメンド機能も
意見分析ツールにおけるAIの活用について藤川教授は「今後、検討が必要だが、現時点ではレコメンド機能にAIを活用することが考えられる」と話す。
具体的には、書かれた意見について、授業の中でどの程度貢献したかを機械的に評価し、AIに学習させる。そして、学生が書いた意見をAIが評価し、一定以上の評価を得た意見をランダムにレコメンドするというもの。意見分析ツールにより、授業における討論が、さらに充実していきそうだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年11月5日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第57回】ICTキャンパス 広島大学「情報化推進で著作権処理 情報メディア教研が支援」 2018年10月1日
広島大学情報メディア教育研究センターでは平成20年からLMS利用を促進するため著作権処理を支援。大学のコンプライアンス向上につなげている。その方法について同センターの隅谷孝洋氏に聞いた。
図表使用などの著作権処理を支援
広島大学は12学部11研究科を擁する総合大学だ。
教育力と研究力を両輪とし、世界トップレベルの「特色ある総合研究大学」を目指している。
文部科学省「平成26年度スーパーグローバル大学創成支援」タイプA(トップ型)13大学のひとつとして、中国四国地方で唯一採択された。
同大学では平成13年頃から、授業の情報化を推進するための1つとしてオンライン学習システム(LMS=Learning Management System)の利用を推進してきた。しかし、ここにひとつ「落とし穴」があったという。
著作権法35条では「授業の過程で利用することを目的として複製する場合」は、他人の著作物の複製が可能なため、教科書やインターネットの図表を複製してスライド教材として使用する教員が多い。
しかし、このスライドのLMSへの掲載は、著作権法35条の権利制限の範囲外で、基本的に元の著作権者から許諾を得ることが必要だった。
「こうしたことは、先生方はあまり知りませんし、もし知っていたとしても許諾を得るための処理はかなり大変です。そこで、大学からの支援が必要ではないかと考えました」と隅谷氏は話す。
こうして平成20年頃から、著作権処理についての支援と啓発の活動が始まった。
著作権処理の流れ
動画中に使う資料の著作権処理が多い
情報メディア教育研究センターではこれまで、次のような支援を行ってきた。
▼教職員・学生向けの講習会や講演会などを収録したものを学内限定で動画配信するにあたり、そこに使われているスライド資料の著作権処理 ▼大学の授業紹介動画を一般向けに配信するにあたり、そこに使われているスライド資料の著作権処理
「授業で使う資料の著作権処理を支援しようとスタートしましたが、実際には授業で使うための資料よりも、学内で一般に公開するもの、あるいはネット上に公開するもの、しかも動画の中で使う場合の処理が多いことがわかりました」
著作権処理は、主に次のような手順で行う。
①転載されている図表(テキストよりも図表が多い)の著作権者を探し、利用条件を調べる
②必要に応じて、許諾を得るために著作権者に連絡
③許諾が得られない場合は、その図表などの代替として自由に再利用できるものをネットで検索
④ネットで見つからない場合は、ぼかしたり削除したりといった動画処理を行う
⑤もしくは、元のとは違う形で図表を自作する
著作権の啓発活動に今後さらに力を入れる
著作権処理の支援を行うことで、著作権侵害の可能性を下げることができ、大学のコンプライアンス向上につながっているという。
また、著作権処理の面倒さを理解し、コンテンツの作成時において著作権処理が軽くなるよう配慮してくれる教職員も現れるなど、著作権意識の向上においても変化が現れている。
「著作権法35条の改正で、今後は授業で使う資料については、ほぼ支援は不要になるでしょう。一方で、授業以外で学内外へ向けての動画を活用した活動は今後増大していくと思われます」
しかしながら、事業にかかる予算が縮小傾向にあるため、支援サービスを大幅に拡大させることは難しい。そのため、啓発活動に重点を置いていく考えだ。
隅谷氏は「教職員の方々が著作権の知識を持ち、コンテンツを作るときに少しずつ配慮してくれることで、全体的な処理量を減らしていく方向を目指したい」と話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年10月1日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第56回】ICTキャンパス 東京電機大学「大学の英語授業でAIツール 英語不得手な理系学生に好評」 2018年9月3日
AI英会話アプリ「SpeakBuddy」を使った授業の様子
創立百年を超える歴史を持ち、理工学分野における人材を輩出している東京電機大学は今年4月から、システムデザイン工学部と情報環境学部に在籍する約200名の学生を対象に、両学部の英語の授業において、AI英会話アプリの使用を始めた。
使用しているアプリは、スタートアップ企業であるappArray(アップアレイ)が開発した「SpeakBuddy(スピークバディ)」。同社によれば、大学の英語授業において、AI英会話ツールを導入するのは、東京電機大学のケースが日本で初だという。
東京電機大学では、これまでも英語学習において、コンピューターを利用したEラーニングやiPadを活用してアクティブラーニング形式で行うなど、ICTを活用した授業を展開してきた。
AI英会話アプリを始め、ICTを積極的に活用している理由について、東京電機大学システムデザイン工学部宍戸真教授は次のように話す。
「当大学の学生の多くが、英語は不得意あるいは苦手と考えていますが、その一方で、コンピューター、ゲーム、スマホなどICT機器には大変興味を持っています。あまり好きではない科目でも、好きな道具を利用して学習することで、英語の楽しさを知ってもらい、将来、グローバルエンジニアとして世界的に活躍できる人材に育ってもらいたいという思いから、ICT機器を英語学習に積極的に利用しています」
短い会話スキットを1回に6~8つ学習
AI英会話アプリ「SpeakBuddy」は、宍戸教授が担当する「口語英語Ⅰ」と「口語英語Ⅱ」で導入している。
授業時間は1回100分だ。短いビジネス英会話のスキットを、毎授業6つから8つ学習する。
スキットごとに、アプリを使い次の学習を繰り返す。この学習に70分ほどを充てている。
授業の流れは以下のようにしている。①単語の提示 ②単語練習問題 ③リスニングモードで会話全体の流れを確認 ④会話モードを各自で発話練習 ⑤穴埋めモードを各自で発話練習 ⑥学生同士でペアワーク(会話を人間同士で練習)
スキットの学習のほか、適宜、音声や発音の解説、発音練習なども行って集中力が継続できるように工夫。AIアプリでの学習のほか、ネットで提供されているサービスを使って、単語、文の語順整序、会話、TOEICのリスニング練習なども行う。
都合の良いときに学習できると好評
AI英会話アプリを導入した効果については、およそ200名の学習者の中から協力してくれる学生約50名を募り、5月と12月にOPIcとTOEICを受験し、スコアを比較して、導入効果を分析することになっている。
「現在5月の結果が出ており、12月には2回目の試験結果が出るので、スコアを比較し、効果分析ができると思います」(宍戸教授)
導入から約2か月たった5月下旬に、学生約200人を対象にしたアンケートによれば、「AIを使った英会話アプリについて『良い』と感じる点」について、117人が「自分の都合の良いときにいつでも会話できる」、111人が「間違っても恥ずかしくない」、85人が「同じ会話を繰り返すことができる」と回答した。
今後は、日本人が話す英語の認識に長けた音声認識エンジンを利用して、新しいアプリを開発することを計画しているという。
「AIはこれからさらに進化します。決まったフレーズを繰り返し発音するだけにとどまらず、自由に会話する話し相手になるのは、それほど遠くありません」と話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第55回】ICTキャンパス 麗澤大学「ヘルプデスクの利用動向調査 設定変更時に問合せが増える」 2018年8月6日
従来乏しかった貴重な調査結果
麗澤大学は昭和10年に設立。千葉県柏市に本部を置き、外国語学部と経済学部の2学部、および大学院には言語教育研究科と経済研究科が設置されている。
創立者の廣池千九郎博士が掲げた「知徳一体」が教育理念で、道徳教育や人格教育に力を入れている。大学付属の組織として、企業倫理研究センターや道徳科学教育センターなどがある。
同学では、情報教育センターがPCのハードやソフト、無線ネットワークなどの情報教育システムを提供。現在、各大学でICTが活用され、ヘルプデスクも設置されているがヘルプデスクに関する定量的な把握や研究成果は乏しく、麗澤大学においても同様だったという。そこで、ヘルプデスクのさらなる効果的な運用などを目指して、利用動向の変化をまとめた。
利用者3000人PC設置685台
同学のICT活用の概略は次のとおりだ。
システムの利用者数は、学生と教職員合わせて約3000人。
685台(平成29年度)のPCを教室やラウンジに設置。38 台のサーバで運用。Wi-Fiについては88台のアクセスポイントを整備している。
ヘルプデスクは平成12年に開設。ICT関係の相談・質問対応や各種申請の受付、トラブル対応、プリンターなどの消耗品管理、記憶媒体の忘れ物管理などを行う。
相談・質問は窓口、電話、メール(学生は窓口のみ)で受け付け。受付時間は平日9時30分から18時まで。2名の窓口対応者と1名の管理者(非常駐)で対応する。
11年間のヘルプデスクの利用動向を調査
年間対応件数は3000~5000件
今回の利用動向についての調査は、平成18年4月から昨年8月までの期間を対象に行った。
同期間の対応件数を、相談、申請、整備、忘れ物、障害、苦情、その他の7種類に分類しカウントしたところ、毎年3000~5000件あり、相談だけでも年間2000件程度発生していることが分かった。
年度によって対応件数はばらつきがあり、平成28年度は5098件、最も少なかったのは平成20年度の2731件(8月までが調査対象の平成29年度は除く)。
件数にばらつきはあるものの、全システム利用者の約3割~5割がヘルプデスクを利用。利用者あたりの平均質問数は約3~4件。年間に複数回利用している傾向にあることが分かった。
麗澤大学情報教育センターの千葉庄寿氏は「ハード機器やOSが変更になるよりも、操作や設定が変わったときのほうが影響が大きい」と話す。
対応時間短いほど満足度は高い
ヘルプデスク利用者の満足度(学部生を対象)と、窓口対応時間の関連性を調査したところ、対応時間が短くなるほど利用者の満足度も高まるのが分かった。
「対応時間が減少することで、本学の技術担当者がユーザ対応に忙殺される時間も減ってきた。そのため、システム開発に投入可能な時間的・人的資源が確保可能となり、運用全体のコスト抑制につながっているようだ」(千葉センター長)
今回の調査研究は①ヘルプデスクの11年分の運用実績を集計し、今後の研究のための基礎的資料を定量的に示したこと②利用実績とヘルプデスク窓口業務の満足度調査の結果をリンクさせたことの2点に大きな特色がある。
千葉センター長は「利用者が何に困っているか、何を必要としているかは、利用ログからはなかなか得ることができない。その意味で、ヘルプデスクはICTに関する『オープンな』問い合わせ窓口として、今後ますます大きな役割を担っていく」と話した。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年8月6日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第54回】ICTキャンパス 崇城大学「新入生が “AIオセロ大会“ “AI活用能力“育む契機に」 2018年7月9日
新入生プログラムの一環として実施
崇城大学は6月7日、「第2回学長杯 AIオセロ大会」を池田キャンパスにおいて開催した。
同大学は工学部、情報学部、薬学部、生物生命学部、芸術学部の5学部10学科を持ち、熊本市に本部を置く。
同学の教育の特色は、専門知識だけでなく、「豊かな人間性」を持つプロフェッショナルになることを目指すことにある。さらに学部にかかわらず、コミュニケーションツールとしての英語力と、情報収集・分析・受発信を主体的に行える情報リテラシー能力の育成に力を入れている。
「AIオセロ大会」は、情報学部情報学科の新入生プログラム「トリプルJ」の一環として行われている。「J」とは情報学部の「ジェイ」だ。同プログラムは、学び合う仲間を作る「新入生育成プログラム」、学部の特色を深く理解する「宿泊研修」、そして今回の「AIオセロイベント」の3つで構成されている。
会場の様子。勝敗が決まるたびに、対戦を見守る学生らから歓声があがった
勝負の行方を決める「戦略ファイル」
参加対象は、情報学科の1年生167人全員。情報技術に触れながら、新入生同士で協力し合ってゲーム競技に取り組むことで、技術への理解を深め、これからの勉学へのモチベーションアップとすることが主な目的だ。
学生は9~10名ほどのチームを作り、チーム対抗で予選リーグと決勝トーナメントを戦っていく。
上位3チームには賞状のほか、賞品として大学食堂の学食券がプレゼントされた(優勝チームには1人あたり1500円分、2位には同1000円分、3位は同500円分)。
ゲームは、教員が製作した、オセロ盤面の各マスに点数を付け、点数の高いマスから石が打たれていくプログラムを使用して対戦する。
各チームは事前に3週間ほどかけて作成した「戦略ファイル」でゲームに臨んだ。
この戦略ファイルをどのように作るかで強さが決まり、勝負の行方が決まるため、学生たちは戦略ファイルの作成に力を注ぐ。
対戦はコンピューターで自動的に進むため、1ゲームわずか10秒かからないで終了することもある。対戦が始まると、学生たちは大画面に映し出されたオセロ盤面の様子を見守り、一喜一憂。勝負が決まるたびに歓声が上がり、会場は盛り上がりをみせた。
地元メディアからも熱い注目
優勝したチームの学生は「(戦略ファイルの作成には)エクセルを用いて、数字のケースを合わせるなど試行錯誤の連続だった。優勝できて嬉しい」とコメントした。
担当教員の杉浦忠男教授は「最近のはやりでもあるAIをリードするような技術者になってもらいたい」と話し、学生の今後の学習や活躍に期待した。
当日は、くまもと県民テレビ、熊本朝日放送、熊本日日新聞社が取材するなど、地元メディアも注目した。
学生の勉学に対するモチベーション効果
入学したばかりの学生にとって、このオセロ大会は、コンピュータプログラムの面白さを体感できる点で、生涯の思い出になりそうだ。さらに、これから大学で専門分野の勉学を続けていくにあたって、大きなモチベーションとなるに違いない。
大学にとっても、「AI」という今後ますます活用の幅が広まる分野に強い大学という認知を広めることにつながり、大学のブランディング効果も期待できるイベントとなりそうだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年7月9日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第53回】ICTキャンパス 金沢大学「バーチャル・ミュージアムで大学の非文献資料を公開」 2018年6月4日
金沢大学資料館ヴァーチャル・ミュージアムでは
個々の資料にメタデータを提供している
物理実験機器など約3800点
金沢大学は、石川県金沢市に位置する日本海側の基幹的国立総合大学だ。大学の源流は1862(文久2)年に創設された加賀藩彦三(ひこそ)種痘所にまで遡る。
同学は平成20年4月、それまでの8学部を3学域16学類へと改組した。同学の角間キャンパスにある金沢大学資料館は、平成元年にオープン。長い伝統がある金沢大学とその前身校、および関係した人たちの学術資料・記録・文書などを収集・整理・保存するとともに展示・公開している。
同学のコレクションをネットで公開している「金沢大学資料館ヴァーチャル・ミュージアム」(以下、金沢大学資料館VM)について、古畑徹教授(人間社会研究域)に聞いた。
ここには、金沢大学資料館及び附属図書館、医学部記念館が所蔵する非文献資料約3800点(物理実験機器、教育掛図、標本、写真、図面など)が公開されている。
2009年からスタートし、研究者が主に活用する一方で、一般の人たちの利用もある。
各資料に詳細なメタデータ
金沢大学資料館VMの特徴は、個々の資料に対して、これまでの研究成果などにもとづいて、詳細なメタデータを付けたことだ。
資料の画像は通常画像のほか、高精細画像も付け、一方向からだけでなく、多様な角度からの画像も資料ごとに6枚程度、掲載している。
「本VMは、日本の非文献資料リポジトリを構築し、研究利用する道を切り開いてきたと自負しています。ここから資源リポジトリ協議会が立ち上がり、大学横断型リポジトリの開発にまで発展していったことは、大きな意義があると考えています」
利用実績は、平成28年度がセッション数1252件、ビュー数3236件。28年度がセッション数1113件、ビュー数2059件。
古畑教授は「以前よりも国外からのアクセスが非常に伸びています。本VMが果たす効果の1つになっているようです」と話す。
大学の研究資源を学術的レベルで提供
実績を積んできたVMだが課題もある。国立大学運営交付金の削減を受け、運営資金が厳しくなっているのだ。
「そのため現在は、基本的に過去に作成したコンテンツの維持だけになっていて、研究関係の外部資金が取れた場合にのみ、新たなコンテンツを作成しています。現時点では予算的なことの不透明さもあり、今後の運営方針が出せない状況です」
古畑教授によれば、大学として構築するヴァーチャル・ミュージアムの役割には、大きく次の2つがあるという。
1つは、大学の研究などの諸活動を広く一般や大学内の人々にアピールする役割だ。
2つ目が、世界中の研究者に向けて、大学が持っている研究資源を学術的レベルで紹介・情報提供し、学問研究の発展に寄与することである。
「大学側からすると、前者としての役割を期待する傾向が出てきやすいのですが、長いスパンで考えるならば、後者としての役割の方が意味をもち、またそれによって大学の研究レベルや知名度を向上させることができるように思います」
大学が持つ研究資源を学術的レベルで公開することは、大学のブランディング効果や、優秀な研究者や学生のリクルートにもつながっていく面があるだろう。大学のバーチャル・ミュージアム運営においては、長いスパンで考える必要があるようだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年6月4日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第52回】ICTキャンパス 京都外国語大学「IRシステムを独自構築 マネジメントを効率化」 2018年5月7日
学内の散在データを一元的にDB化
1947年に創立した京都外国語大学は、国内で最初に設立された私立の外国語大学だ。
これまでは単科大学であったが、今年度、新たに国際貢献学部を創設した。
同学は「IR(Institutional Research)」を積極的に推進し、学修成果の可視化や大学運営に必要な調査分析など、多面的にIR活動を進めている。
IRとは、大学の研究、教育、財務、社会貢献などに関して、情報収集や調査活動を行うことだ。
近年、大学の組織運営や教育改革において、各種データの重要性が再認識されてきたが、それが「IR」という形で注目されている。
栗島聡JDMC会長より表彰状を授与される、
同学 総合企画室 IR推進グループ 西出崇講師(中央)
同大学がIR活動を進めるにあたって課題だったのは、学内の各部署にデータが散在していたことであった。
「大学内にあるデータは、形式が一定ではなく、再利用可能な形式で保存されていない、データ自体の存在が相互に不可視である、データを一元的に集約し管理する主体がいないなどの問題がありました。そこで、大学内のデータの洗い出しと整理を行い、一元的に『IRデータベース』として集約し、定期的に同期するシステムを構築しました」(京都外国語大学総合企画室 IR推進グループ 西出崇講師)
現在は、入学年度別退学者数の推移や、TOEICスコア点数分布を詳細にクロス集計して分析したり、高校別入学情報や、就職に関する情報などを容易に閲覧できるようにし、教育の現場で活用している。
BIツールを活用して分析結果を提供
データを使って分析した結果は、BI(Business Intelligence)ツールを用い定型レポート化して、ウェブベースで教職員に提供している。
「これまでは職員が手間をかけて集計し、資料作成を行っていましたが、新たに構築したIRシステムによって大幅に効率化が進むとともに、横断的なデータを用いた情報提供も可能となりました」(西出講師)
オープンソース製品を利用することで、格段に低コストで構築・運用できるようになった。
システムは独自に開発したもので、システムの内容については、すべて学内で把握しているため、教職員などからの分析やデータ提供のニーズに対して、迅速かつ柔軟な対応も可能だ。
データマネジメントの観点から高評価
今回のIRシステムは、効率的なIR基盤を整備した点が評価され、日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)が主催する「第5回データマネジメント賞」で「アナリティクス賞」を受賞した。
「今回の受賞は、本学のIRの取り組みがデータマネジメントという観点で一定の評価がされたものだと考えます。学内にはまだ利用されていないデータが数多くあり、必要なレポートも十分に整備されていません。今後も、よりよい大学運営や教育改善につながるIR活動のあり方を模索していきたいと思います」(西出講師)
同大学のIRシステムは、学内の資源と組み合わせて独自に構築している点などを含めて、大学のIRシステムとして、先進的な取組であると言えるだろう。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年5月7日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第51回】ICTキャンパス 近畿大学「N高と包括連携協定 アプリ開発に初挑戦」 2018年4月2日
ニコニコ生放送開発エンジニアが講師
近畿大学は、ドワンゴ、角川ドワンゴ学園「N高等学校」と平成29年11月に包括連携協定を締結し、互いの強みを生かした教育研究の振興や人材育成に取り組んでいる。
第一弾として今年2月5~9日、近畿大学東大阪キャンパスにおいて、同大学の学生を対象にした課外講座「プログラミングブートキャンプ」を開催した。講師を務めたのは、ドワンゴのサービス「ニコニコ生放送」の開発にエンジニアとして携わり、N高のプログラミング授業の講師も務める吉村総一郎氏と折原ダビデ竜氏の2人。
5日間で未経験者がスマホアプリを開発
N高が公開している「N高ブログ」でも、今回の「プログラミングブートキャンプ」の様子を紹介している。
参加したのは、これまでプログラミングに触れたことのない近畿大学の学生37人。プログラミング言語であるHTML、Java Script、CSSの文法をゼロから学び、Monaca(アプリ開発プラットフォーム)を利用して、iPhoneやAndroid向けのオリジナルスマホアプリを開発した。
キャンプ前半の3日間は、Java Scriptの学習や演習課題に取り組み、if文、for文、配列や関数、オブジェクトを学んだ。後半2日間は、学習した内容を活かして、スマホアプリの開発に挑戦。N高でプログラミングを教えているTA(ティーチングアシスタント)3人が参加者をサポートした。
自由な発想でユニークアプリ
参加した学生たちは初心者にもかかわらず、自由な発想で、次のようなユニークなオリジナルアプリを開発した。▽合コンでの話題を提供するアプリ▽スロットアプリ▽実験用のモル計算を行うアプリ▽音ゲーアプリ▽カクテル辞典アプリ▽アドベンチャーゲームアプリ▽オススメのランチ判定アプリ▽動体視力トレーニングアプリ▽旅行先決定アプリ▽合コンの席決めアプリ▽シャーペンの芯を出すアプリ
このほか各種バラエティに富むアプリが開発された。参加者の多くは「自分で作ったアプリが動いて、とても感動した」との感想を持ったという。今回のキャンプ参加をきっかけに、N予備校(ドワンゴが提供しているeラーニングサービス。生放送授業や教材がスマホに最適化されている)のプログラミングコースを利用して、今後さらにプログラミングを学んでみたいと考える学生も多くいたようだ。
ウェブサービスやスマホなどの普及によって、ITサービスが一層身近になった今、プログラミングの技術や知識などの情報活用能力は、様々な仕事と密接な関係を持つようになった。今回のような取組を通じて、学生がプログラミングの知識や経験を持つことは、様々な可能性の拡大につながりそうだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年4月2日号掲載
(執筆 蓬田修一)
【第50回】ICTキャンパス 早稲田大学「理工系・人文科学系データサイエンスを融合」 2018年3月5日
データ駆動型研究さらなる進化へ
早稲田大学は平成29年12月、「データ科学総合研究教育センター」の活動を開始した。
データ科学総合研究教育センターでは専門領域とデータ科学を融合する
理工系および人文社会科学系の専門領域の知見と、データサイエンスとの融合を図り、人材育成と、大学全体の研究力を底上げしていく。
同センターの活動領域は、大きく教育面と研究面に分かれる。
教育面では、専門性をデータで実証する能力を身に付けた、これからの社会において有用な人材を育成していく。
一方、研究面では、人文社会科学分野における文理融合大型グループ研究により、データ駆動型研究を進化させていく。
「データサイエンスを活用するには、その応用先である専門分野の知識が必須。当センターがフォーカスしているのは、専門性とデータサイエンスとの融合です」(データ科学総合研究教育センター所長 松嶋敏泰教授)
データ科学の研究・教育をサポート
同センターは、研究・教育を支援するため、次の3つを柱として、サービスを提供していく。
1. 研究者マッチング
解析してほしいデータを持つ研究者と、高いデータ解析能力を有する研究者をマッチングさせ、両者のコラボレーションによる研究を促進する。
2.データ分析研究コンサルティング
研究活動において、データ解析を活用したいと考えている大学院生や若手研究者などのニーズに応じ、研究コンサルティングやサポートを行う。
3.データサイエンス教育
データ解析能力を身に付けたり伸ばしたいと考えている大学院生や若手研究者らに対して、自学できる学習コンテンツを提供したり、専門家を招いた公開講座を開催。
専門、理論、スキルいずれも重要視
データ科学総合研究教育センターの特徴は、データサイエンスを活用したいと考える人の専門的知識、データサイエンスの理論、コンピュータを使って解析できるスキルの3者を重要視していることだ。
「専門がなければ、データから何を見つけたいかが決められません。また、理論がなければ、どのような分析をすればいいか分からず、分析結果も解釈できません。さらには、スキルがなければ、実際にデータを分析できません」(松嶋教授)
現在、学問の分野では、新しい研究パラダイムである「データ駆動型研究」が急速に進展している。また国としても、総務省は公的統計ミクロデータの研究活用を推進し、文部科学省はAIP(Advanced Integrated Intelligence Platform)プロジェクトを策定し、AI、ビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティを統合した施策を進めている。さらに、ここ1、2年、データサイエンス教育・研究を強化する大学も、全国的に増えてきた。
こうした動きの中、早稲田大学のデータ科学総合研究教育センターは、私立大学としての強み(国立大学とは異なり、建学の精神にもとづき、独自に定める方向性に向かっていけること)や、総合大学としての強み(様々な学部を有し、専門性も多岐にわたること)を最大限に活かしながら、人材育成と研究力向上に力を入れていく考えだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年3月5日号掲載
(執筆 蓬田修一)












