【第53回】ICTキャンパス 金沢大学「バーチャル・ミュージアムで大学の非文献資料を公開」 2018年6月4日
金沢大学資料館ヴァーチャル・ミュージアムでは
個々の資料にメタデータを提供している
物理実験機器など約3800点
金沢大学は、石川県金沢市に位置する日本海側の基幹的国立総合大学だ。大学の源流は1862(文久2)年に創設された加賀藩彦三(ひこそ)種痘所にまで遡る。
同学は平成20年4月、それまでの8学部を3学域16学類へと改組した。同学の角間キャンパスにある金沢大学資料館は、平成元年にオープン。長い伝統がある金沢大学とその前身校、および関係した人たちの学術資料・記録・文書などを収集・整理・保存するとともに展示・公開している。
同学のコレクションをネットで公開している「金沢大学資料館ヴァーチャル・ミュージアム」(以下、金沢大学資料館VM)について、古畑徹教授(人間社会研究域)に聞いた。
ここには、金沢大学資料館及び附属図書館、医学部記念館が所蔵する非文献資料約3800点(物理実験機器、教育掛図、標本、写真、図面など)が公開されている。
2009年からスタートし、研究者が主に活用する一方で、一般の人たちの利用もある。
各資料に詳細なメタデータ
金沢大学資料館VMの特徴は、個々の資料に対して、これまでの研究成果などにもとづいて、詳細なメタデータを付けたことだ。
資料の画像は通常画像のほか、高精細画像も付け、一方向からだけでなく、多様な角度からの画像も資料ごとに6枚程度、掲載している。
「本VMは、日本の非文献資料リポジトリを構築し、研究利用する道を切り開いてきたと自負しています。ここから資源リポジトリ協議会が立ち上がり、大学横断型リポジトリの開発にまで発展していったことは、大きな意義があると考えています」
利用実績は、平成28年度がセッション数1252件、ビュー数3236件。28年度がセッション数1113件、ビュー数2059件。
古畑教授は「以前よりも国外からのアクセスが非常に伸びています。本VMが果たす効果の1つになっているようです」と話す。
大学の研究資源を学術的レベルで提供
実績を積んできたVMだが課題もある。国立大学運営交付金の削減を受け、運営資金が厳しくなっているのだ。
「そのため現在は、基本的に過去に作成したコンテンツの維持だけになっていて、研究関係の外部資金が取れた場合にのみ、新たなコンテンツを作成しています。現時点では予算的なことの不透明さもあり、今後の運営方針が出せない状況です」
古畑教授によれば、大学として構築するヴァーチャル・ミュージアムの役割には、大きく次の2つがあるという。
1つは、大学の研究などの諸活動を広く一般や大学内の人々にアピールする役割だ。
2つ目が、世界中の研究者に向けて、大学が持っている研究資源を学術的レベルで紹介・情報提供し、学問研究の発展に寄与することである。
「大学側からすると、前者としての役割を期待する傾向が出てきやすいのですが、長いスパンで考えるならば、後者としての役割の方が意味をもち、またそれによって大学の研究レベルや知名度を向上させることができるように思います」
大学が持つ研究資源を学術的レベルで公開することは、大学のブランディング効果や、優秀な研究者や学生のリクルートにもつながっていく面があるだろう。大学のバーチャル・ミュージアム運営においては、長いスパンで考える必要があるようだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年6月4日号掲載
(執筆 蓬田修一)
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