【第67回】ICTキャンパス 愛知教育大学 音楽教員養成でICT活用 「イメージ楽譜」で視覚化 2019年9月10日
演奏設計図を制作
愛知教育大学教育学部 武本京子教授は「イメージ奏法」を開発し、音楽教員養成の授業において実践を重ねている。近年はICTの活用により、教育効果がさらに高まっているという。
「イメージ奏法」とは「楽譜の奥にある作曲者の主張、思想、情動などを推測し、演奏者の過去の体験や記憶、思考、言語、色彩を取り入れて、イメージを明確にした視聴覚融合の奏法」だ。
まず作曲者の主張、思想、情動、などを推測し、調性、速度、メロディー、ハーモニー、音楽記号などを分析。作曲者の作品に対する客観的考察を行う。
次に、演奏者の過去の体験や記憶をはじめ、思考、言語、色彩、絵などを使って、演奏設計図である「イメージ楽譜」を制作。
「イメージ楽譜」とは、自分がどのように音楽を演奏したいかをまとめた演奏設計図だ。このイメージを再現するための演奏法を確定していく。
演奏の設計図「イメージ楽譜」
イメージ映像を共有
聴衆と音楽を共有するための「イメージ映像」も制作する。
教員養成大学の学生にとって、人間を知り、コミュニケーション力を養うことは必須だ。
武本教授は「言動やコミュニケーションの多様さや反応を学び、音楽を通して創造した空間の中で、人間の思考や行動を考えることで、学校教育現場における子どもの心の教育への適応を図る狙いがあります」と話す。
ネットやスマートフォンが普及する前、学生たちは楽譜に手作業で曲線を描き、そこに彩色してイメージ楽譜を制作していた。今は、PCやスマホを使って、音楽に関する情報を調べながらイメージ楽譜を作っている。
「学生は、イメージ楽譜をスマホに取りこむことで、いつでも見直したり修正したりできるようになりました」
イメージ映像も、ネットから、曲に合った写真や映像などを取り入れて制作している。
授業では、学生が制作したイメージ映像を、スマホからプロジェクターに接続してスクリーンに映し出し、教室にいる学生全員で共有している。
「ICT機器を活用してイメージ映像を共有することで、学生の意欲は増し、教養や興味も広がり、効果的なアクティブラーニングを実践できるようになりました。学生は主体的に学んで制作したものを共有しながら討論できるので、授業への取り組みが積極的になったことはICT活用のメリットです」
「イメージ奏法」で演奏する
音、映像、言葉が相乗的に心身へ好影響
「イメージ奏法」を導入したことで学生たちは、音楽がこの世に何のためにあり、どのような役割があるのかを真剣に考えるようになったという。
「音楽を可視化する過程で、多様な考え方を尊重し、自らも心を開放して音楽という架空の話の中で、他の人格を認め、音色を多彩に奏でるための練習に没頭できるようになりました」
武本教授の研究室と藤田医科大学の伊藤研究室は先頃、20~24歳の男女を対象に、ICTを利用した「イメージ奏法」が、人の心身に与える生理的反応について共同研究を行った。
その結果、「イメージ奏法」による音楽と映像に接することで、人は状態不安や交感神経の指標であるアミラーゼが活性化するとともに、ストレスホルモンのコルチゾールや、幸福ホルモンのセロトニンの各濃度に影響を及ぼすことが分かった。武本教授は「『イメージ奏法』による音楽、映像、言葉が相乗的な誘因となって、心身に良い影響を及ぼすことが示されました」と分析している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年9月10日号掲載
(執筆 蓬田修一)
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