新春の和歌 「初春(はつはる)の 初子(はつね)の」 万葉集 大伴家持
[訳:蓬田修一]
初春(はつはる)の 初子(はつね)の今日(けふ)の 玉箒(たまははき)
手にとるからに ゆらぐ玉の緒
右の一首、右中弁大伴宿禰家持(おおとものすくねいえもち)の作。ただし、大蔵の政に依りて、奏し堪(あ)へず。
万葉集
[現代語訳]
初春の 初子(はつね)の今日の 玉箒(たまほうき)
手に取ると 揺れ鳴る玉の緒
右の一首、右中弁大伴宿禰家持(おおとものすくねいえもち)の作。ただし、大蔵省の勤務の都合により、奏上できず。
[ひとこと解説]
この歌は「新古今和歌集」巻七賀歌にもとれらているが、読み人しらずとしてある。
玉箒(たまほうき)は正月最初の午の日、蚕室(さんしつ)を掃(は)くために使った箒(ほうき)。寿命を意味する玉を飾る。玉の緒は、玉箒の玉を通した紐(ひも)。玉箒を揺らすと魂が活発となり邪気を払うとされた。揺れる玉の緒とともに、命も清らかに揺らぐ心情を表現している。群臣達は天皇から玉箒を拝領したのちに、新年の宴会となったという。
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