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新春の漢詩 「富士山」 江戸 柴野栗山



[訳:蓬田修一]

[漢文]

富士山  江戸 柴野栗山

誰将東海水
濯出玉芙蓉
蟠地三州尽
挿天八葉重
雲霞蒸大麓
日月避中峯
獨立原無競
自為衆岳宗

[書き下し]

富士山(ふじさん)  江戸 柴野栗山(しばのりつざん)

誰(たれ)か東海(とうかい)の水を将(も)って
濯(あら)い出だす玉芙蓉(ぎょくふよう)
地に蟠(わだかま)って三州(さんしゅう)尽(つ)き
天に挿(さしはさ)んで八葉(はちよう)重なる
雲霞(うんか)大麓(たいろく)に蒸(む)し
日月(にちげつ)中峯(ちゅうほう)を避く
獨立(どくりつ)原(もと)競う無(な)く
自(おのずか)ら衆岳(しゅうがく)の宗(そう)と為(な)る

[現代語訳]

富士山(ふじさん)  江戸 柴野栗山(しばのりつざん)

誰であろうか 東海の水で
美しい富士山を洗い上げたのは
山の裾野は大地にまたがり その広大さは甲斐・相模・駿河の三州に及ぶ
天に頂をさしはさみ その美しさは八枚の花弁が重なったようである
雲や霞は山裾から湧き上がり
太陽も月もまん中の高い峰を避けて通っていくようだ
高く独立した姿はほかに競うものがなく
自然と天下における山々の長となったのである


 

Posted on 2014-12-29 | Category : コラム, 漢文のこころ | | Comments Closed
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